26 アンドロイドはボーカロイドの夢を見るか 2

俺とケイスケの二人がクリンプトン社についたときにその会社の社員らしきお偉いさんぽい人とミサカさんが出迎えた。
相変わらずミサカさんはミサトさんと比べると外見はあまり気にしていないらしく、化粧はしてないどころかボサボサの上に乱れたブラウス。まるでセックスした後に急いで着替えたような…。あぁ、そういう人じゃなかったね、仕事のし過ぎですよ。
廊下を歩く時についでにと、クリンプトン社員の方はこの事件に関することの経緯を説明してくれた。
「実はネット上のとある掲示板で『初音ミンク』のデビューコンサートに対して、テロ行為をする、として捉えられるような書き込みが多く見つかりまして、警察と協力して犯人を突き止めるべく我々も動いていましたのですが、どうやら根が深いようでして…」
「根が深い?」
「我々も警察も、最初は特定の人物による犯行予告だと思っていたのですがそうではないようで…。どうやら初音ミンクのデビューをよしとしていない人達がいるようなんです。それも沢山」
「へぇ〜…なんでだろうねぇ」
ちょっと遅れて歩いているケイスケが息を切らしながら言う。
「はぁ、ふぅ…2次元の…3次元化を嫌う、ふぅ…主義の思惑ですぉ」
「なにそれ?」
「ずーっと昔から日本では、ふぅ…繰り返えされてきた事ですぉ。はぁ、ふぅ。2次元のつまり、アニメのキャラがいて、ある日、3次元のアイドルが、ふぅ、2次元のアニメキャラの地位を借りて、ふぅはぁ、アイドルとしてのし上がろうとする…それはアニメのファンからすると許せない行為なのですぉ」
「ん〜…アニオタの考える事はよくわからない」
息を切らしたケイスケに代わってミサカさんが説明する。
「例えばキミカさんがドロイドバスターとして人気がある中で、どっかのわけのわからない女子高生が『実はあたしがドロイドバスターキミカでぇ〜』なんて言ってアイドルデビューして、キミカさんの立場を利用して荒稼ぎしてたら?」
「ブッ殺すかな。とりあえず」
「そうよ。そういう事」
「でも初音ミンクはアンドロイドなんでしょ?それに開発元も同じクリンプトン社だから、クリンプトン社のボーカロイドである初音ミンクのファンからすれば初音ミンクが進化したようなものじゃ…」