25 アンドロイドはボーカロイドの夢を見るか 1

とある土曜日。
朝ごはんを食べた後、そういえば朝ごはんを準備したケイスケの姿がないなぁ、また研究室に閉じこもったのかな、なんて思っていたら携帯電話片手にウロウロしている姿を廊下で見かけた。俺はそのまま自室に戻ろうとしたところ、ケイスケがそのまま携帯電話片手に「キミカにゃん!」と俺を呼び止めた事が始まりだった。
「ん?」
「お手伝いして欲しいにぃ…」
「どしたの?」
「桂ミサカさんは知ってるかにぃ?」
「あぁ、うん。この前いた人でしょ。ミサトさんと顔がそっくりの。双子の妹だっけ…?」
「そのミサカさんからお願いがあるんだにゃん」
「え?あたしに直接?」
「そうですぉ。個人的にはこのお願いは受けたくないというか、警察には協力したくないというか…なんというか…」
「テロリストが云々の話なんだよね?」
「ま、まぁそうだにぃ」
俺は携帯を受け取ってミサカさんと話す。
話の内容としてはこうだった。
『クリンプトン・エンターテイメント』…ボーカロイドと呼ばれる商品を世に出している会社のうちの一つで、ボーカロイドというのは音楽のクリエーター達が『人の声』を楽器の一つとして自分の作曲している歌の中に組み込めるというソフト。つまり、ボーカロイドが無い時代はボーカル(人)が最終的には歌わない限りは歌としては完成しなかったのを、このボーカロイドのお陰で人無しの状態でも一人で曲を作れてしまうようになった。クリエーターさん達曰く、画期的なソフトウェア。
クリンプトン社ではこのボーカロイドをさらにアイドルの域まで持って行きたいらしく、芸能界のアイドル関係の事務所、及びアンドロイドメーカーのバックアップを受けて晴れてボーカロイド『初音ミンク』をアンドロイドアイドル『初音ミンク』としてデビューさせたい…。
今回の依頼主は警察とクリンプトン社だった。
つまり、何かしらの問題が起きたという事だった。