24 初詣と願い事 6

境内に入ってからはお賽銭箱までの列はすぐだった。なにせここにいる大半の参拝客はお参りするのが目的じゃなくて聖地巡礼をして手に入るグッズが目当てなわけだから…。列はお賽銭箱じゃなくて巫女さん(2名)がいるところにカーブを描いて進んでいる。
お賽銭箱に小銭を放り込む。
そして手を叩いて目を瞑る。
よく考えたらこんな小銭で願いを叶えて欲しいなんて思うんだから神様も「こいつら…」って思うだろうな。あげくにこの境内に集まってるアニオタ達は参拝もせずに巫女さんのところでアニオタグッズ貰ってウハウハしてるんだから。などと考えているとメイが、
「お姉さま、お願い事は何にしましたの?」
「え?うーんと…強くなりたいって」
「ま!お姉さまらしいですわ!!」
「え?そう?」
「そうですわ!!だって、まるで本当にドロイドバスターキミカ様のようですし…」とメイは手と手を合わせて俺を神様かのように見つめている。
ま、冗談抜きにして強くなりたいっていうのは本心かな。
どんなに強い力を手に入れたとしても使いこなせなければ意味はないよ。俺にはそれがまだ出来ていない。ケイスケが頑張って兵器を作ってくれていて、それがどんなに強くても俺はそれに甘んじているだけじゃダメなんだ。そんな過信はいつかは自分を滅ぼす。
「あんたは何をお願いしたの?」
俺の後ろから声がする。ユウカだ。
「ん。だから、強くなりたいって」
って答えたのはメイだったかな。
「え?」
「ん?」
なんだ?あぁ…笑うところだと思ってるのかな。
「強くなりたい?」
「笑うところじゃないから…まぁいいけど、笑っても」
「いや、そういうんじゃ…」
「ドロイドバスターと見間違えた?」なんて俺がいってからかってやる。「まさか、何調子に乗ってんのよ?!」って返答が返ってくると思ったら黙ったままうつむいてしまった。あれ…変な雰囲気だな。でもそんな雰囲気をぶち壊すように、
「お姉さまぁぁぁ!」ってメイの声が。
「え?なになに?」
「待ち人来るとでましたわ!大吉ですわ!新年そうそうおめでたいですわ!」
「へぇ〜!よかったじゃん!(って、はしゃぐから転びそうになってるぞメイ)」
「ひゃッ…」
雪で滑って思いっきり転びそうになるメイ。ったくしょうがない奴だな。俺はメイの体重を引っ張り上げるほどの力を持っていないし体重もそれほどないからこのまま行けば何もできずにメイだけが転ぶわけだけど、グラビティコントロールでメイの体重を軽くして転ばないようにしてあげた。
「あ…」
「ほら、転んじゃうよ。危ない危ない」
「お、お姉さま、今…何か天使のような力を感じましたわ」
「おめでたいから天使が降りてきたんじゃないのかな〜」
などと誤魔化した。
メイは終始俺の方を目を白黒させながら見ていた。それからまるで何かを理解したかのように一人頷くと、俺の腕をとって歩き始めた。