22 あけおめことよろ 5

さっきまでの沈んだ気分がどんどん晴れていった。
女子寮っていうと男の俺としてはちょっと気分が高揚するキーワード…なのが本来なわけだけど、今の俺にとってはこの寂しい気分を打ち消してくれた温かい場所を示す言葉だ。
よかった。今年もお正月を誰かと一緒に迎えられる!
ナツコとにぃぁ、ユウカとナノカ、俺の4人が街灯はあるけども普段よりも雪で薄暗くなっている学校下の街路樹が並ぶ道路を歩いて行く。さっきよりも雪は積もっていてグモグモっていう踏みしめる音が鳴り響く。深夜の学校っていうと誰もいない寂しいところなイメージだけど、俺達が通っている学校は校内に女子寮があるわけで、なんだかんだ言って校内には人がいる。大晦日のこの日にも。
玄関で雪を落として洋風のその建物の静かな廊下を進む。洋風の造りは廊下には温かみが無くて、コツンコツンという靴の音が響いて体感温度が下がっている気がする。ようやく辿り着いた部屋も、高校生が生活するにはえらく豪華な造り。木の大扉を開けたらそこには洋風の部屋が広がっている。すげぇ…。
部屋は暖炉があって大きなベッドが二つ。中央に豪華なテーブル、椅子、隅には木彫りの学習机、机上にはネットワーク端末やらがアンティークとアンマッチな雰囲気をかもしだしている。そして壁には一面に俺の写真が…っておい!!
「な、な、なんじゃこりゃぁぁぁぁああああ!!!」
俺は叫んだ。
「何ってドロイドバスター・キミカのポスターよ?」
まるでりんごは木から落ちるのは重力があるからよ、そんな事も知らないの?っていうようなユウカの言葉。
「いや、あたしの写真に見える」
「ちがうちがう!そんなわけないじゃん!」
「ここってユウカの部屋?」
「だから後輩の部屋って言ったじゃない、ほら、音無、挨拶しなさい」
ベッドの中から女の子が…。ちょっと日本人にしては髪の毛が赤毛な感じの、ペチャパイで背丈は俺ぐらい、特徴と言えば…ランジェリーって言うのかな、色っぽい下着をつけてる。その子は俺をじっと見つめた後、まるで周囲の時が固まったかのように動かなくなって、いや、頭だけは動いてて、俺とポスターを交互に見ては目を見開いて、「き、キミカさま!!」と叫んだ。
「え?」
「きゃぁぁぁぁあああああ!!!」
俺は一瞬、俺が男でセクシーランジェリー姿の彼女を見てしまったから金切り声を上げたのかと錯覚してしまった。それは否定の金切り声じゃなくて俺に対する好意の叫びだったらしい。俺に飛びついて抱きしめてくる。
「あああぁぁぁぁぁ!!キミカさまが現れたのですね!!わたくしの願いが通じましたわ!!!!ずっとあなたのファンでしたァァァァァ!!!」
え、ちょっ…一体何がなんだよ。
ユウカがメイの頭を手で掴んで俺から引き剥がそうとしながら、
「離れなさいよ、こら。この人はドロイドバスター・キミカじゃないわよ。藤崎紀美香。私のクラスメートよ」
「え?そうなのですの…こんなに似ていらっしゃるのに」
間髪入れずにナノカが続けて、「名前もキミカだしねー」と言う。
「キミカとこんなのとを一緒にしないように!」
とユウカ…言わせておけば…このビッチめ…。
「『こんなの』っていうセリフをヤリマンのあなたから聞くとは思わなかったわぁ〜」と言ってあげた。
「なんですってぇ〜?」
「まぁまぁ、御二人とも、今日は大晦日なんだから仲良くしようよ」
と間にナノカが入って仲裁をする時も、メイの瞳はがっしりと俺を視界に捉えていてそこからロックオンをしたまま、解除する事はなかったのだった…。