22 あけおめことよろ 4

沈んだ気持ちでカラのカートを押していた。
軽いはずなのにこのカート、重いな。
ん?よくみると、向こうの方からやたらと沢山のものを…野菜だとか肉だとか色々と詰んだカートがこちらに移動してきてる。アレは鍋でもするのかな?あぁ、そうだ。鍋がいいなぁ。すき焼きとか。
そういえば前の年も正月に家族と親戚ですき焼き鍋やったっけ…。あの頃はよかったなぁ。あの頃がよかったなんて「あの頃」は思いもしなかったけど、時間が立ったら昔の事はいい事になるんだな。そうだよ、鍋がいい。みんなで鍋を囲みたい。
「あら、キミカじゃない」
ん?なんか聞き覚えのある声が、そのやたらと沢山のものを積んでいるカートの向こう側から聞こえる…っていうか、そっちからは見えるのかよ。俺からは見えないのに。
「え?キミカっち?あ!ナツコっちも!」
声で分かった。ユウカとナノカか。友達同士で鍋パーティでもするような勢いで買い物してるな。
「…ユウカとナノカ?何やってるの?」
「何って…買い物よ。ナツコとキミカも二人でお買い物?」
「あぁ、うん…」
「へぇ〜。意外な組み合わせ。二人でパーティするの?」
「え、えと」
俺はナツコと顔を見合わせる。
「今日はお兄様が家にいらっしゃらないので、二人でお惣菜でも買って家で食べようとしていたのですけど…ほとんど売り切れですわ。他のスーパーを当たらないといけないのかと思っておりましたの」
「あぁ、そう…あ、そうだ。じゃあ今から寮に来ない?」
「えぇ?」「え?」と俺とナツコが返事をする。
「寮で鍋パーティするの。あたしと、ナノカとそれから後輩の3人で」
3人でその量かよ…ゾウでも飼育してるのか…。
「人数が多いほうが楽しいよ!キミカっちもナツコっちも、あとそちらの猫ちゃんも、一緒にどうどう?」
俺は全然OKなんだけど…と、ナツコの顔を見たら、
「別にわたくしはかまいませんわ」と言っている。決まりかな?
「そちらの猫ちゃんも行く?」
「にぃぁは何か食べれるならどこでもいいよ」
「にゃーん!」
雰囲気を察したのかにぃぁはニコニコしながら鳴いた。