22 あけおめことよろ 3

地元のスーパー。
規模は市内では大きい系統のスーパーにあたる。大きな駐車場があって正月のパーティものの料理をまだ買ってない人達が沢山買ってはカートで車まで運んでいる光景が見える。その駐車場も雪に覆われそうになっている。
学生の俺達がすぐに買い物に出掛ける事が出来る範囲にあるスーパーで一番大きなところをチョイスしたつもりだ。この時間になればもうお惣菜などが売れ残っている確率が低いからね。
カートに買い物かごを入れて野菜売場から魚売り場へと移動していくと、あぁ、やっぱり売れ残っているものが少ないのが目に付く。
仕事帰りの男性、女性があまりの売れ残りの寂しさに「大晦日まで働いてそのご褒美がこれかよ…ふざけんなよ…」などという力の抜けた怒りすら感じられてしまうほどにアレな空気だ。それは俺達3人も同じ。
別にパーティをしようなんて思っていなかったし、ナツコと俺、それから猫一匹というこのメンツでパーティしたところで微妙な空気になるだけだった。だけれど、毎年毎年、俺は家族とささやかながらにも普通に正月を過ごしてきたんだから、ちょっとだけ、パーティっぽいのを味わってみたいなんて思っていた。少なくとも寂しい気分にはなりたくなかったんだ。
「なぁぁぁ〜ん」
にぃぁは秋刀魚(100円)を美味しそうに見ていた。
「売り物なんだから食べちゃダメだよ」
と俺が止める。
「ずいぶんと買われていますわね」
「…うん」
「なぁぁ〜ん」
俺達二人+1匹はカラの買い物かごを入れたとても軽いカートを押しながらお寿司のコーナー、惣菜のコーナーと回ったけども、パーティ用の料理はもうなかった。我慢して一人用のを買えばいいのだけど、二人ともそれには目が言ってなかった。あぁ、そうだな。ナツコも俺と同じでパーティーモノの料理を探してくれてたんだ。
なんとなくそれは嬉しかったけど、でも、結末は見えてたな。こりゃ俺達が求めていたものは売ってないな。