21 タイガー・ランペイジ 6

俺は隙をみてタイガー戦車のセンサー範囲外と思われる距離まで逃げた。
今の俺の一撃でスカーレットのプラズマシールドは削り取れたはずだ。追い打ちを掛ければ殺れたかもしれない。だが、深追いは危険だ。俺のプラズマシールドも今は削り取られているし…。
それにしても以前よりもスカーレットの攻撃が強くなっているような気がする。街でああやってどうどうと暴れているのも警察や軍を相手に戦えるだけの自信があるって意味だ。装備はなんら変わっていないのに、力だけは強くなっている。
いや、それ以前に俺が弱すぎるのだろうか。なんていうか、装備やら力の違い云々じゃなくて、普通にフォーム?柔道の選手に素人が挑んでいくような感じだった。例え身体が大きく力が強くても相手は自分の力を最大に出せるだけの知識と経験が身体に染み込んでいる。それだけの時間を訓練へと当てているって事なんだ。
それに比べたら俺はどうなんだろうか…。どんなに強い武器を貰っても、それをうまく扱えていないのなら、それが俺の弱さではないのか…。
「まだまだ修行が足りない…か」
俺はプラズマシールドが回復したのを確認して再びタイガー戦車への接近を試みようと立ち上がった。というところで通信。
『キミカ君。そちらは大丈夫かね?』
『ん?マダオ?』
『すまんが、私はマダオではない…。なんで毎回このやり取りが行われなければならないのだ…』
『あぁ、ごめん。なんかその声を聞くと直感的に「マダオ」ってキーワードが頭に浮かんでくる。』
『まるで「マダオ」というキーワードが宇宙の真理の一つになっているかのような物言いだな…。アカーシャクロニクルにそんな言葉が流れていたら神様もびっくりだぞ』
『それで、何の用事?』
『敵の戦車、タイガーについてだ』
『ああ、うん』
『奴は内部に発電所を持っているというのは既に連絡したとおりだと思う。その発電力でプラズマシールドを作り出している。まさに歩く要塞だ。そして、奴は若干改造をされているようで、プラズマシールドではなく、ATフィールドを使っている事が分かった』
『ATフィールド?』
『そうだ』
『オートマティックフィールドの略?』
『いや、アブソリューティッド・テラー・フィールドの略だ』
『それは本当なの?』
『もちろん本当だ』
『なんか名前が中二病臭い。絶対嘘でしょ』
『いや、私が名付けたのだ。本当だ』
『なおさら嘘じゃん』
『名前なんてどうでもいい。アブソリューティッド・テラー・フィールドでいいじゃないか。何が問題なんだ?』
『いや…やっぱ中二病臭いのは嫌…。正式名はなんなの?』
『…プラズマフィールドだ』
『…』
『おい、無言はやめてくれ!せめて何か言ってくれ!』
『で、それはどんな能力があるの?』
『近くに味方と認識されるものがいれば電力を供給してシールドの補強などを行う事が出来る。つまり、キミが今戦っているスカーレットのシールドはタイガーと同期している事になるのだ』
『マジで?』
『大マジだ。キミのプラズマシールドの回復よりも速いぞ!』
と、マダオから聞いた瞬間だ。
奴だ。
スカーレットの野郎が壁をぶち壊してアニメショップ(俺が隠れていたところ)に入ってきやがった。