20 キミカ・ファンクラブ 7

にぃぁの一件から数日経ったある日。
教室に入った後、ユウカやナノカのいる席に向かうと机の上に写真が沢山広げられている。なんとなくアイドルについて語り合っていそうな普通の女子高生的な雰囲気だった。
写真を見てみる。
ん?
俺の写真じゃん!
いや、正確には俺が変身した後の写真だった!ひぃぃぃ!!俺がドロイドをぶった切ってる写真、俺が銃を構えている写真、俺が被弾して前方にプラズマシールドが現れている写真、俺が蹴りでドロイドの分厚い装甲を凹ませている写真、俺がグラビティコントロールで周囲の道路を浮かせている写真…。どれも素人が撮影したようなもの(画像がそれほどいいカメラを使っている感じじゃないので)ばかりだった。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁあああ!!!」
俺は写真を見て叫んだ。
「何って、キミカの写真よ。なんなのよ?」
「な、なんなのよ、じゃないよ!なんでこんな物持ってるの?」
「雑誌からの切り抜きよ」
「いやいやいや!アイドルのスクープ写真じゃないんだからさ」
「アイドルみたいなものじゃないの。ほら、雑誌にたーくさん、キミカちゃん特集してるのよ、こことか…あー…かっこいいわ!!可愛くてかっこいい!かわかっこいい?あーん!!また会いたい…」
俺はユウカに切り抜かれて骨だけになったような雑誌を取り上げてそこにあるキーワードを見た。明らかに「キミカ」って書かれてある。なんかかっこよく『ドロイドバスター・キミカ』とでかでかと文字が…。
「な、なんでドロイドバスター・キミカって名前になってるの…」
震える手で雑誌を持ちながら俺が言うと、
「なんでって、それは私がインタビュー受けた時にその女の子の事を『キミカ』って呼んだからじゃないのかな?」
「なんで勝手にキミカって名前にしちゃってるんだよ!!」
「あら?前に説明しなかったっけ?」
「だから…それはユウカが勝手に付けた名前でしょ?」
「ま、まぁ、そうだけどさ、いいじゃん、名乗らないヒーローなんだから名前付けてもさ。あーん!私の付けた名前で彼女がヒーローになるのね…なんだか自分の子供が成長していく姿を見ている母親の気分だわ…」と顔を赤らめて写真に頬ずりしてウットリ。
この野郎…。
「あ、そういえばキミカっち、ドロイドバスター・キミカに似てない?」
とナノカ。
「似てないわよ全然ッ!こんな奴が似てるわけないわよ。仮に顔が似てても正確は絶対違うんだから」などと言いながら俺のおでこをピンピンと指で弾くユウカ。ムカつく奴だが俺はそれどころでは無かった。
「潰す…潰ス…マジデ…潰ス…」
「どうしたのキミカっち?顔が怖いよ」
俺は雑誌の中のとあるページを見ていた。上の方には小汚い小さな部屋にむさくるしい男が数名集まっている写真。無精ひげを生やしていたり、脂ぎった髪をしていたり…。よく見るとそこには俺の写真や抱き枕、ポスターなどが並んでいるのだ。下の方には俺の戦闘服のコスプレをしているちょっとデブな女が写っている。似てねぇ!!!似てると思ってるのか?!そうならたしかにその天然具合が取材されていてもおかしくない…。
「まぁまぁ、いいんじゃないの」と俺をなだめるユウカ。
「よくなーい!!!」
「なに?ドロイドバスター・キミカに嫉妬しているの?」
「そんなわけないじゃん!!…とにかく、この抱き枕持っているキモオタは殺しておかないと、いずれ社会にとって害悪になると神ガ言ッテイル…(白目」
「あははは、ほんと、キミカってば子供ねぇ〜」
てめぇも殺す…。