20 キミカ・ファンクラブ 6

にぃぁを捕まえるのは容易ではない。というのは普通の人間の感想である。だが人は高速に移動する物体を捕まえる捕まえない以前に、頭脳があるのだ。そう、にぃぁは高速で移動する以前に、猫である。あ、猫っていうのは俺の予測ね。なんとなく鳴き声とか耳とか尻尾とか、そういう要素がどうも猫っぽいんだ。
ケイスケが何かを作るときは忠実に原作を再現しようとするだろう。…と言っても、作っているのは猫女だから、原作である猫を忠実に再現するはずだ。
つまり、猫が行きそうなところに奴はいるし、奴に写真を取りなさいなんて命令をしている奴もきっとそこにいる。にぃぁはアホだから餌貰えれば言う事聞くらしい。俺のケツからチョコを搾り出してケーキを作った時は何かを貰ったわけじゃないらしいから、心の優しい猫なんだろう。でも今回のはちょっと違う。
俺たち4人は学校で猫が集まりそうな場所、ちょっと日陰になってて捨て犬だの捨て猫だのが餌を貰って生きているような場所を当たった。そして一番最初のそこに、奴が居たのだ。
「もぐもぐ…」
にぃぁはペットがご飯食うときのあの容器から猫まんまを食っていた!!手を使わずに!!!猫かよ!!いや、猫だった!!!
「ちょっ…マジで…何やってんの…」とユウカ。
数名の男子がインスタントで作れる猫まんまを容器の中に注ぎ、それをにぃぁがもぐもぐと口だけで食っているという凄まじい光景…。
「にぃぃぃぁぁああん…」
嬉しそうに尻尾をフリフリしている…。
「うおおお!!な、何って、猫に餌あげてr」
バレて慌ててる男子達。身体でにぃぁを隠そうとするけどそりゃ無理って話じゃん。
「いや、猫じゃないし!!人間じゃん!!」
「あんた達があたしの写真をにぃぁに撮らせていたのね…」
「き、キミカちゃん、落ち着きなよ、大丈夫、変な写真は新聞に載せないから!!」と中でも一番身体が大きくてデブな男が言う。
「廃部よ!廃部!!!」
というわけで、廃部どころか部活としてもまだ認めてもらえてない彼らの集まりはユウカの生徒会への通報で公に明かされる事となり、にぃぁが餌付けされているという情報もそれに添えられて、俺の写真を撮る活動は禁止された。というか、マークされて身動きが取れなくなったのだろう。