20 キミカ・ファンクラブ 3

結局、あの新聞が貼ってあった廊下で休み時間が終わるまで待っていたけど誰も貼りに来なかった。っていうか、貼りには来なかったけど、あの新聞が廊下から無くなっているのを通りすがる男子や先生が悲しそうな顔で見ていた。まるで今日の楽しみがひとつ奪われたかのような顔で寂しそうな背中で通りすぎて行った。
そういう雰囲気を感じ取ったのか、ユウカは一層苛立っていた。
で、放課後、
またユウカがあの廊下で待機しようとか言い出したので俺とナノカは「廊下で待ってたら余計に貼りに来ないんじゃないの」と落ち着かせた。そしてナノカから意外な提案が…。
「そうだ、あの写真とかさ、やっぱりベストショットを撮ろうとする人がいるわけだよね。キミカっちの周囲を見てたらカメラ小僧がいるんじゃないのかな、いるよ、絶対に!」
鼻息を荒くしてそう言う。
「でも今までそれらしき人は見かけなかったんでしょ?」
と俺に言うユウカ。
確かに怪しげな奴はいなかったかな。でも俺は男だからそういうカメラの視線っていうのにあまり神経使ってないっていうのもあるけどな。
「今日部活でそれらしき人がいるかどうか見てみればいいんじゃないかな。たまには水泳部に顔出さないといけないかな、っていうのもあるし」
俺と同じく幽霊部員なナノカもそれには賛成した。
「なるほど、あなたにしてはいいアイデアね」
なんかあなたにしてはっていうトゲのある言い方を毎回するのはツンデレなのか、それともツンツンなのか、それともただのビッチなのか。多分ただのビッチなんだろう、ひどい奴だ。
「ビッ…じゃなかった、ユウカも一緒にプールに入れば?」
「ちょっ、今あんた絶対にビッチって言おうとしたでしょ?」
「いやいや」
「どうしてあたしがプールに入らなきゃいけないの?」
「そりゃ近くで怪しげな奴がいないか見るためだよ」
「そ、そうね、確かに名案だわ。あなたにしては」
ふッ…間抜けな奴め、これで次回の新聞の表紙にビッチの写真が載るわけだ。そうなってもこいつは新聞部を廃部させようとするかな?