16 妹救出作戦 5

俺は研究所のゲートが見下ろせる小高い丘の草むらから望遠モードで監視の連中を見ていた。
「警備が厳重だね」
タチコマは身体の色を森林迷彩に変えていたけど、まだ十分に隠れていないので俺はそこら変に生えてる雑草をいっぱいタチコマにくっつけている。その雑草の塊みたいなタチコマが俺と同じ様に望遠モードで監視を見ながら言った。
「正面から強行突破するかな。ホントは忍者みたいにひっそりと侵入したかったんだけど」
「あ、光学迷彩ある?」
「え?こうがくめいさい?」
「透明になれる奴だよ」
「えっと…」
『おーい、石見博士は居ますか?』
『あらどうしたの?』
『ちょっと装備の事で聞きたくて』
『わかったわ、本部に回線を回すわね』
しばし通信が途切れる。それから、
『(ボリボリ)』
何か聞き覚えのある音が聞こえてくる。俺がデブの家にいるときに頻繁に聞いていた音だ。これが何の音かと言えば、一つしかない。デブがポテチを食ってる音だ。
『おい!』
『うひっィ!!』
『緊張感が削がれるような音を聞いたせいでやる気が無くなった』
『ご、ごめんですぉ…。ちょっとストレスを感じて食に走ってしまったのですぉ。ごめんなしぁ』
光学迷彩ってある?』
『あー、搭載するの忘れていましたぉ』
『この、マジで…ころs』
「ない!」
「ダメだなぁ〜ボクは搭載してるよ!じゃーん!」と言いながらタチコマ光学迷彩というのを実践しやがった。クソ。綺麗に消えていやがる。でも俺がタチコマにくっつけた雑草は残っている。雑草が宙に浮いているような滑稽な姿だ。
「隠れてこそこそするなんぞ女々しいことよ!男なら正面からガンガン突いて突いて突きまくる!」
「えー。忍者は〜?」
「ノー忍者。ノーセンキュー」
俺は武器リストからプラズマライフルを取り出す。地面に腹ばいになって銃を構える。望遠モードにして、正面の検問所にいるアメリカ兵を狙う。
「建物に近い奴から狙おう。多分そいつが非常ベルボタン押すから。映画でみたんだよね、警報鳴らされたら他の兵士が集まってきちゃう」
パスンッ。という静かに空気が抜けるような音が響いて、プラズマライフルから発射された弾はアメリカ兵の頭にヒット。次に検問の前にいる兵に照準を合わせて、パスン。トラックの側にいる兵に合わせてパスン。トラックに載っている奴に合わせてパスン。
「よし、いくよ」
「がってんしょうち!」
タチコマはモサモサした雑草を揺らしながら腕を上につき上げた。