16 妹救出作戦 3

輸送機は幾度となく上昇を繰り返し、気がつけば高度は5000メートルまで上がっていた。俺とタチコマは降下ポッドと呼ばれるミサイルみたいな形の乗り物に入って待機。以降はミサトさんや本部にいるデブ、マダオとは通信で連絡する事となった。
『それじゃ初任務頑張ってね』
『任務…』
『あぁ、そうね、お手伝いしてくれるだけだったわよね』
『そうですよ。あたしは兵士じゃありませんから』
『それにしても、あなたはホントに強い人ね。高校生の時に銃撃戦を体験することになるってイメージつかないわ。女の子だったらなおさらよ、ほら、学校で友達と話すのにも勇気がいるでしょ』
『女の子じゃないですよ』
『あぁ、ごめんなさい、男の子よね』
『確かに銃弾が飛び交うような戦場みたいな経験は2回あるけど、思ってたより自分が落ち着いてたのは驚いたかな』
初戦で多脚戦車とやりあったときも、あのスカーレットっていうおばさんとやりあった時も自分でも驚いたぐらいに落ち着いていたからな。俺は中学の時に先輩に呼び出されて殴られた事があったし、街でカツアゲ喰らったこともあった。あの時感じたビビッている感覚が無い。そりゃ確かにこの強い(?)身体を手に入れたからっていうのもあるけど、それでも油断したらバリアも切れて死んでしまう。それなのに俺は臆すること無く向かっていったからな。いや、恐怖というよりもむしろ冷静な判断を常にしているような気がする。
『あなたが危ない時は全力で助けに行くから』
そうミサトさんは言った。
『それはありがたいですね』
ま、助けに来られたほうがこっちとしては危なっかしくてみてられない事になるんだろうけど。
『あ、そういえば、このポッドって、まさか撃墜されたりしないよね…?』
『ん。大丈夫よ。鳥みたいなもので、レーダーには検知できないから。それと、降下ポッドはさっきの作戦会議で決まっている位置に落ちるわ。周囲は林よ。1キロぐらい進んだところに研究所があるわ』
『了解』
『それでは、健闘を祈ります』
ミサトさんのその言葉と共に、電波にノイズが入った。身体が落ちていく感覚に覆われる。目の前のモニタにはポッドの前面に搭載されてるであろうカメラからの映像が映る。その隣に現在の高度。目の前の雲の抜けると島が現れた。多分、これがハワイ島だ。
身体に急激な重力の変化を感じる。
轟音。