16 妹救出作戦 2

「え?ミサトさん、この目の前にいるドロイド、人の声が出てるよ。何これ?」
俺が指さすと、「そうよ、その子が光莉司令が言ってた秘密兵器」と言う。
「ふーむ…」
「なんですか?なんなんですかぁ?その『何この変なロボット』的な目。ボクはコレでも立派な戦闘用ドロイドなんですよ!」
「戦闘用…ねぇ…」
「あ!バカにしてるなーっ?」
『どうやら秘密兵器に合流したようだな』
「うわ!」
「?」
びっくりした。頭の中に光莉司令の声が響いてくる。デブが通信機能を光莉司令に渡したってことか。…ったく、びっくりした。
『いきなり話し掛けないでください。びっくりした』
『すまん。で、秘密兵器はどうかな?最終決戦兵器エヴァンゲリオンは』
『えーっと、これがエヴァンゲリオン?』
ほんと、エヴァンゲリオンが好きだなぁ、この人。
ミサトさん、このロボット、エヴァンゲリオンって呼ばれてるの?」
「え?そうなの?」
ミサトさんも知らないらしい、そのエヴァンゲリオンって呼ばれているミニチュア多脚戦車に聞いている。
「ん〜。ボクはTS1244sって正式名で、某アニメに出てくる思考戦車に似てるからって理由で『タチコマ』とか『フチコマ』って呼ばれてるなぁ〜。エヴァンゲリオン?アニメの見過ぎだよ、そのオッサン」
そのオッサンって、俺が誰と通信してたのか分かったのか?凄い。
エヴァンゲリオンじゃないって本人が言ってるよ』
『なら今日からエヴァンゲリオンに改名すると言ってくれ』
「…」
「どうしたの?」
「なんか司令が今日からキミはエヴァンゲリオンだ、って」
「いやだ!いーやーだー!お断りしまーす!」
と言いながら変なポーズを取るタチコマ。そして続けて、
マダオの言う事間にうけたらダメだよ」
と言う。
マダオ?』
『ちょっ…、私は光莉司令だ。失礼じゃないか』
『え?誰も光莉司令の事を言ったわけじゃないけど。っていうかマダオって何?』
マダオではない』
マダオって呼ばれてるの?』
『頭の弱い連中がそう呼んでいるだけだ。私に対する侮蔑だよ』
「なんでマダオって呼んでるの?」と俺がタチコマに聞くと、
マダオっていうのは『マるで』『ダめな』『オとこ』でマダオ。ボクもどうして司令がそう呼ばれてるのかわかんないよ、でも兵隊さんがそう言ってたのを聞いたから」
「…」
うーん。なんだかちょっと可哀想な気持ちもするなぁ…。でもいいや、なんかマダオうざいし。あ、俺もマダオって呼んじゃった。
「それじゃ、そろそろいくわよ。準備はOK?」
ミサトさんは張り切った声で言う。
俺は「OK」と答え、タチコマは「出発しんこーっ!」と元気な声で腕(前足)を空に向かって上げて言った。