15 秘密組織エルフ 3

「先程も説明を受けただろうと思うが、君にはまず岩国空軍基地で装備を整えて貰う。そこで我がエルフの『決戦兵器』と合流・同行し、ハワイ上空まで輸送機で移動、そして降下作戦にはいる」
「その決戦兵器っていうのがエヴァンゲリオン?」
「うむ」
「…さっきあたしの事もエヴァンゲリオンって呼ぼうとしてなかったっけ…?」
「それは諦めた」
「諦めるんだ…」
ホログラムにはハワイにあると思われる米軍の研究所の立体映像が映っている。衛星から情報を取得して映しているので人間とかはなく、ドロイドやら戦車やらがリアルタイムで動いているようにも見える。
「ハワイにある米軍の研究所は兵士の肉体的な改造を主体にした研究が行われているという事だけわかっている。警備はどこも手厚く行われている。侵入はキミが一番都合のいい場所からでかまわんだろう。だが、出る時は注意が必要だ」
ホログラムのモニターはその研究所とおぼしき建物の正面玄関を映す。
「この研究所以外にも基地が存在する。そこから救援が到着するのもすぐだろう。救援が集まりやすいのがこの正面ロータリー。なるべく戦闘を避けて脱出するなら裏口だな」
「ふむふむ」
岩国基地に駐屯しているエルフの秘密兵器は人を搭乗させる事も出来る。要人はこの秘密兵器で運ぶといいだろう。(ホログラムの基地裏口から指をさして)このまま市街地へと迎え。そこに大使館がある。そこに人質届ければ任務完了だ」
「えっと…。その秘密兵器以外には誰か助けてくれる人はいるの?」
「いない。アメリカ領だから軍は近づけない。キミを降下するので限界だ。あぁ、大使館には軍の関係者を派遣しておく」
「大使館に米軍が入ってきたらどうするの?」
「それは法的にも国際的にも問題があるからしないだろう。だからキミの任務は大使館まで要人を送り届ければ完了という事になる。他に何か質問はあるか?」
「えっと…。相手はアメリカ人の兵士なんだよね、目的達成の為に大暴れしてもいいってこと?っていうか、殺してもいいのかな?」
「かまわん。思う存分…と言いたいところだが、要人も同行するわけだからそれは無理だろう。キミが可能な範囲で対処してくれ」
ふむ。相手は一般人ではなく兵士、とは言っても、一人の人間なわけだからどうなんだろうな、いくら救出の為とは言っても、殺してしまっていいものなのかな。俺がそんな事を考えていたのが分かったのか、
「躊躇いは死に繋がる。戦場では殺るか殺られるかだ。正義や悪がどうとか考えているのなら、それは無意味だ。正義は生き残ったほうにある」
俺はふとデブの顔を見てみた。デブは汗を掻きながら、それをハンカチで拭いて、
「し、仕方ないですぉ。妹を助ける為、正義がどうとか綺麗事は言えない時があるのですぉ…よろしく頼むにゃん」
そう言って頭を下げた。
一方で光莉のほうは、ちょっと期待するような目をして、
「もしかして、『父さんはボクに友達を殺せっていうの?』というセリフを言おうとしているのか?」
「いや、父さん違うし、それに友達じゃないし。まぁ、相手がビビって逃げてない限りはあたしも容赦しない事にする」
それから俺とミサトさんは岩国空軍基地へ、ヘリで向かった。