15 秘密組織エルフ 2

いきなりその男は…その男って言っても多分、ミサトさんの言うボスなんだろうけど、俺の事をシンジって言った。いや、俺の事を言ったのかどうかわからなかったので俺は「あ?」というマヌケな声を発した後、後ろを振り返ったり周りを見たりして「シンジ」っていう男がどこにいるのか探してみたんだけど、俺とデブとミサトさん以外は誰も居ない。
「ええっと…連れてきました。彼…いや、彼女がキミカさんです」
ミサトさん、俺の事を説明。
「あー、うん、そうか。ゴホンッ。えっと、シンジって呼んでもいいかな?」
え、ちょっ…人違いじゃなくて俺をシンジって呼びたいのかよ、コイツマジで頭に蛆でも沸いてんじゃないのか?その男は顔を赤らめながら、もじもじとしながらそう言ったのだ。
「嫌ですけど…」
俺はストレートにそう答えた。
「そ、そうか」
俺は小声で、
「(ミサトさん、シンジってなんなんですか?)」
「(えっとね、このボスの人は名前を『光莉ゲンドウ』と言ってね、日本軍(南軍)のボスよ。で、無類のエヴァンゲリオン好きなのよ。私も名前がエヴァの登場人物に似てるからって採用されたぐらいよ。で、シンジっていうのはエヴァンゲリオンの主人公で『碇シンジ』っていうのが本名ね。光莉司令はあなたにシンジに成り切って欲しいみたいよ)」
「え?嫌ですよ…。っていうか、男でしょ?主人公」
「(ま、まぁそうだけどさ…)」
こそこそと話してる俺達を見てから何か言いたそうに、俺達の会話のどこで言葉を挟めばいいのかタイミングを見計らっていたような感じで光莉司令は、
「えー、ごほんッ。では、『シンジ』って呼んだらダメなら、『エヴァンゲリオン初号機』って呼んでもいいかな?」
「嫌です」
「ふむ…君は自分の意見を素直に言うな」
「いや、なんか最後のは人ですらないような気がしますし」
「そ、そうか。嫌か…」
ちょっと寂しく肩を落とす光莉司令。
「光莉司令、それよりも彼に…じゃなかった、彼女に色々と説明しなきゃいけないんじゃないですか、例えば今回の作戦の事とかも」
「あ、うん、そうだな」
それから背後のホログラムのスイッチが入って、なんかよくわかんないロゴが大きく表示された。そしてそのロゴの説明でもするかのように、光莉司令は一言、
「秘密組織エルフへようこそ」
と言った。なんか中2病臭くなってきたぞー。
「えっと…その『エルフ』っていうのは何なんですか?…なんていうか、中二病臭い…名前の組織は…」
最後の「中二病臭い」云々は小声で言った。っていうのも、俺がその質問をしたら待っていました!っていうが如く、いきなり解説を始めたからだ。だから「その中二病臭い…」云々は聞こえていないだろう。
「秘密組織エルフ…それは来るべきサードインパクトの為に政府が極秘裡で軍内に創設した組織…という設定だ」
え?いま最後「設定」って単語が聞こえなかった?聞こえたよね?
「まぁ、単なる軍の中の一派閥よ。南軍を光莉司令がそう呼んでるだけ」
「…」
そんな話をしている間にも光莉司令はなんか中二病臭いキーワードをばらまきながら親切に解説している。俺は聞いてないけど。
「…そして人型決戦兵器、エヴァンゲリオンを…」
「光莉司令。作戦の話を」
「そ、そうか…わかった」
光莉司令残念そうな顔をして顎に蓄えているヒゲをシャリシャリと手で弄りながら、渋々作戦の説明を始めた。