14 囚われの妹 3

「あなたの妹さんである石見夏子さんが米軍の兵器研究所で目撃されたとの情報が軍部に流れたの。昨日の2時頃の事ね。石見夏子さんはあなたと同じ、日本軍の兵器開発に携わってきた優秀な人材よ。それが国外で兵器の開発協力をしている…。これがどれだけヤバイか判るわよね?」
やばい…のかな?日本とアメリカは同盟国じゃ…?
「日本とアメリカは同盟国だから、日本の研究者がそこにいても変な話じゃない…んじゃないの?」と俺は聞いてみた。が、デブは腕を組んだまま、考えている様だ。ミサトさんは俺に説明してくれた。
「もちろん、日本とアメリカは同盟国だから兵器の技術交流はちゃんとあるわ。でも政府が認めた人材が政府が認めた技術交流をしていただけ。ちゃんと国と国の境目は政府や軍の中で決められた範囲内で行われているという事よ。石見博士の妹さんは日本政府や日本軍が外部に漏らしたくない、高度な技術を持っている研究者。例え同盟国でもその情報が漏れてしまうのは、国防っていう観点からすると危険なのよ」
「なるほど…。それで妹さんを日本へ連れ戻すって話になってるのかー」
「話はそれほど単純じゃないわ」
「え?」
「国と国同士の話では石見夏子さんはその兵器研究所に居ない事になってる。で、政府と軍部の判断では、もう特殊部隊を送り込んで連れ戻さなきゃいけないね、って話になってる。でも一部の強硬派は技術が外部へ漏れてしまうのなら妹さんを殺害する事も視野に入れてるという話なのよ。それで私たちの派閥は軍が動く前に、妹さんを救出しようとして動いてるってわけよ」
「なるほど…大変だね…」
デブは相変わらず腕を組んで目をつむったまま、静かに聞いてる…のかな?寝てるんじゃないの?いや、寝てはなかったか…。
「わかったにゃん。妹とは兵器の方向性が違うから好きじゃないけど、それでも血の繋がったたった一人の妹だにゃん。まぁ、『妹』という言葉は血の繋がった妹を意味するものではないけども、その話は今度じっくり話すとして。わざわざそれを僕に言いにきたという事は、これから軍に協力して欲しいっていう交換条件ですかぉ?」
「さすが、物分りがいいわね。そういう事」
ん〜。なんだか二人の間でどんどん話が進んで言ってるから俺は一言言っておかないと。というわけで、「ちょっと待ってよ。あたしが協力するって前提で話が進んでいるみたいなんだけど…」と一言。
俺がそう言うと、ミサトは何かとんでもないものを見るような目で俺を見ている。一方でデブの方は俺の足元で土下座して、「お願いしますにゃん。キミカ様、ご希望あらば足をペロペロしますにゃん…」
「いや、それをやったら絶対に手伝わないから!」
「ではお尻をペロペr」
「だから『ペロペロ』から離れろ〜!」
ニーソを脱がそうとするデブの頭を引き剥がす俺。そんな二人のやり取りをみながら、その間にミサトが入ってきて、
「ちょ、ちょっと待って。石見博士。このキミカちゃんって子、アンドロイドじゃないの?」
おーい…。
「人間ですぉ。だからさっき元は男の子で…って」
「え?」
「人間を改造してスーパーヒーローを作ったにゃん」
「えええ!!」
「だからこうやって(土下座をしながら)頭を下げて、お願いしなきゃ協力してくれないにゃん。ほら、ミサトさんも土下座しなきゃダメですぉ」
いや別に土下座しなくても。
「私からもお願いするわ、協力して」
と土下座するミサト。いや、土下座するのかよ、あんたも!
というわけで、俺は石見博士ことデブの妹を救出するという任務につくことになったのであった。