14 囚われの妹 1

その日は日曜日。
朗らかな日の光が部屋を照らし、ちょっと肌寒い部屋の温度を温めていく。春眠暁を覚えずというか、2度寝したくなるような、そういう意味で気持ちのいい朝だった。
俺はベッドから起き上がると既にデブは起きてるみたいで1階のほうから音がする。それから話し声も。話し声?
俺が一階に降りてみるとキッチンにいるはずのデブが玄関で誰かと話をしている。ここからは顔は見えなかったけど声からすると女性。ゆっくりと階段を降りていくとその彼女の全貌が現れる。ジャンバーに下はブラウス、それからミニスカートに黒のタイツ。ちょっとセクシーな格好だけど、ビジネス街などではよく見る。上がジャンバーではなくスーツだったらよく見るねー。
顔もなかなか。美人ではありますね、俺ほどじゃないけど。
それにしてもデブにこんな美人の知り合いが居たなんて驚いたなー。女の子に友達がいるなんてデブが嫌ってる「リア充」の部類に入るだろうに、それを地でいくんだから、デブが「私はデブが嫌いです」って言うようなものだよ。
「あ!」
その女性は俺が階段から降りてくるのを見て驚いたようだ。それから、
「あ、あなた…そういう…」
と言った。なんとなく、「あなたはこの中学生ぐらいの女の子とそういう関係なの?」って言いたそうになっているのを俺は悟った。何故なら俺の格好は普段の男用のパジャマにブラ無しパンツ一丁だったからだ。ちなみに布団の中ではパンツ一丁だったけどちょっと肌寒いからパジャマを着た。
「ち、違う!違うにゃん!」
デブは誤解をとこうとしてる。その女性がデブに嫉妬してそんな事を言っているんだと思ったよ。でも違ってて、
「これは、一度警察を…いや、PTAでも呼んだほうがよさそうね」
と言った。一方でデブは誤解をとこうと声を荒らげて、
「違うにぃぃぃ!!!彼女がキミカだぉ!」と言った。
「え?」
「ん?」
俺とその美しい女性は再び目が合った。そしてさらに驚いた声になって、
「…ビデオの映像でしかみなかったけど、まさかこんな小さな女の子が…驚いたわ。…でもちょっと違うんじゃないかしら?髪の色も」
「そ、それは変身したら変わるぉ」
「へ、変身?!ますます凄いわ…さすがは石見博士」
石見はかせぇ?
俺はデブの隣にちょこんと立ってから、「この女の人は誰なの?紹介してよ」と言った。ジト目でデブを睨みながら。あぁ、これは「あんた、自分で『リア充が嫌いだ』って散々あたしの事を煽ったあげくに自分はそんな美人とお知り合いだなんてねぇ」って意味だから。決して俺とデブが恋人みたいな関係で俺が嫉妬して吐いたセリフじゃありませんから。でもやっぱり勘違いしてるのか、その美女はジト目で、
「どういう関係なのかしら…?」と言った。
「いやだから違う…。キミカは中身男の子なんだぉ。こんな姿してるけど。フヒヒッ。僕は彼女…いや彼のメンテナンスの為に同居してるだけであって、変な事は全然してないにゃん…。えぇっと、キミカ、この女性は軍の人だぉ。『桂ミサト』さんだにぃ」
「どういう関係なの?」
さらに続けて俺がそう言った。えっと、これも決して俺とデブが恋人みたいな関係で俺が嫉妬して吐いたセリフじゃありませんから。でもやっぱり勘違いしてるのか、その美女はジト目でデブを睨んでる。
「この人とは軍学校の同期だにぃ。一度は同じ部隊にいた事があるよ…フヒヒッ。それだけだにゃん。それ以上の関係はないッ(キリッ)ま、まぁ立ち話はなんだから家に上がってもらうにゃん…ふぅ」
なんとも疲れが見えますね。相変わらずジト目のままミサトは、
「そうね、上がらせてもらうわ。二人の『愛の巣』に」
と言った…。