13 帰宅部のエース 3

その日の夕方、俺は明日から部活がいい、と言って何とかして今日も家に帰ってやろうとしたんだけど、ナノカが俺のスクール水着(ただし部活用なので競泳っぽい奴だけど)を買いにいくと言って聞かないので、ビッチとナノカ、そして俺の3人でスポーツ用品店でサイズの合う水着を買ってきた。
その足でまさか学校のプールまで行かされるとは思わなかった。もう明日でいいじゃん、俺家に帰ってから見たい番組があるんだよ、と言っても聞かない。どうにでもして俺にスクール水着を着せたいらしい。
「先に行ってみんなに説明しとくね」
とナノカはさっさと着替えてプールサイドへ歩いていく。
俺とビッチは二人っきり更衣室に残された。
「ホントに水泳部入っちゃうの?」
とビッチが聞いてくる。
「うん。幽霊部員でもいいって言うから」
「あぁ…なるほどね」
「何?まだテニス部に入れたがってるの?」
「そりゃそうよ、絶対に県大会出れそうだもん」
「テニス部は…ちょっとねー」
「な、なによ?私がいるから?」
まぁ実はそういうわけじゃなくて、俺が一番嫌なのはアレなんだよね。ふと顔が浮かんだ。イケメンでリア充な先輩だよ。
「いや、あのリア充…じゃなかった、スケベな先輩がいるじゃんか、フォームを直す様に見せかけて太ももとか触ってきた人」
「あぁ…」
「ああいう女の子目当てでやってる人が近くにいるのが嫌なんだよね。それに比べると水泳部のあの鼻血を出した先輩は(鼻血しか印象がなかった)純情そうで下心なさそうだし」
普通の女の子なら少しは下心あるような男性がいるほうが刺激的でいいのかも知れないけど、俺は中身男の子だからな、しょっちゅうベタベタと男に触られるような環境は耐えられない、精神的に。
「そ、そっか…ならしょうがないわね…。気が向いたらいつでも体験入部受け付けてるから…」
ちょっと寂しそうにビッチは言った。
そしてそのまま更衣室を出て行った。
俺は俺でプールサイドのほうへと歩いていく。ん?どうやらちょっと騒がしい。またナノカが俺について変な事言ってるのかな?
心配だなぁ、あの百合姉さん。