13 帰宅部のエース 2

「キミカっち、水泳部に入りなよ」
突然ナノカがそう言う。
「な、なんで…」
スクール水着姿がみたーいって吠えてたじゃんか」
「吠えててはないけど…」
「でも見たいか見たくないかって言えば?」
「見たい」
すかさずビッチが、「見たいのかよ」って突っ込む。見たいさ、見たい、あー見たいなー。至近距離で見たい。目に焼き付けたい。というかカメラとかに収めて保管したい。全ての男の夢と言っても過言ではない。
「あー。キミカっち目がイッちゃてる」
「うへへへ…」
二人のやり取りを見てビッチは、
「ついていけないわ…私を巻き込まないでよね」
と呆れた顔で言う。
「ユウカっち…あんまりそういう事言っても説得力ないよ。うふふ」
「な、なによ」
「『キミカが助けてくれたの〜!』って言ってたのは何かしら?キミカは女の子の姿だったんだよね?百合の素質があるんじゃないのかな?」
ああ、確かにそうだ。ビッチが変身後の俺に興味を示していたのが気にはなっていたんだよ。
「ちょッ…誤解しないでよね!そういう意味じゃなくて…」
「ん?どういう意味なの?ん?」
ナノカはさらに追い打ちを掛ける。
「だから!違うってば。そういう性的な意味じゃないわよ。もっと憧れみたいな、そういうものよ。あんな達は女どうして肌をくっつけあってすべすべして気持ち良いだの、暖かくて気持ち良いだの、いい匂いがするだの言ってるだけじゃない。それが変だって言ってるの」
いや、そんなこと一言も言ってない…。
「ふふふ、私とキミカっちが仲良くおふとんの中でチチクリあってたらいずれユウカっちも我慢できずに飛び込んでくる事でしょう…」
「あーはいはい、そうですね(棒」
ナノカは俺に向き直って、
「それで?どうする?キミカっち!」
「ん〜…。水泳部は魅力的なんだけど…」
「でしょでしょ?!」
後、一つだけ障害があるとすれば、デブが俺が部活に入部するのを許すかどうかだなぁ。例のテニスの一件があってからリア充だとか(俺はそんなワード使った事ないんだけど)、友達、一緒に、二人組つくってとかいうワードが禁則ワードになってて、二人組作っての「二人組」ってワードだけでも敏感に反応して何かわけのわからない事を唸った後、枕を涙で濡らしていたからなぁ。その禁則ワードの中に「部活」ってのも入ってたような気がする。
「えっと、」
と俺が答えようとしたら、俺の背後からデブの気配。
「ダメダメダメ!!ダメだにぃぃぃぃ!!ッ!」
「げ、先生」
げ。デブ。なんで気配消して俺の背後にいるんだよ。こいつ意外と強者ではないか。今までの話を聞いていやがったな!
「なんでダメなんですか!先生のケチ」
「そうだよ、もっと大人になりなよ、先生」
と俺とナノカでぶーぶー文句をいう。
「み、み、水着姿で男女が、おお、お、おおお、同じプールに入るなんて…ダメだダメダメダメだにぃぃぃ!エロ過ぎるにゃん、お天道様が黙っていてもこの石見佳祐が許さないにゃん!きっとご両親も娘さんの裸がどこの馬の骨ともわからん奴に視姦されてるのを知ったら悲しむはずだにぃ…」
「別に全裸で泳ぐってわけじゃないんだから…」
「水着着てるんだからダメ!しかもただの水着じゃなくてスクール水着!!はぁはぁ…心拍数が上がってきたにぃ…」
「確かに裸よりもイヤラシイ格好ではありますけど…」と俺は言いながらも、ナノカに言葉では言わなかったが「ほら、こういう事だからあたしは帰宅部なんだよ、わかる?」って感じに伝えた。ナノカにもそれが伝わっているみたいだ。そして、何か戦略があるらしい。
しばし、ナノカのターン。
先生(デブ)の耳元にこそっと顔を近づけてヒソヒソと何か話してる。時々デブがナノカの顔を見て「え?え?」などと言いながら。そして腕を組んで何か深く悩んだ後、
「きょ、許可するにゃん…」
え?マジで?
何を話したんだよ?!