12 ヒーローインタビュー 2

「ねぇねぇ」
ナノカはしつこく聞いてる。そろそろビッチはキレる頃だぞ。
「その幼なじみの男の子とはどういう関係だったのぉ?ユウカが『ヒーロー』だって言うぐらいだから、すっごくカッコイイ人?超強いの?」
うわぁぁぁぁ…やめてくれー。ここに本人がいます。やめて下さい。恥ずかしい事言わないで。本人がいないと思って本人の評価を言う時が一番辛い事言われるのを俺は知ってる。こいつらの中じゃ俺は死んだ事になってるからな。死人に口なしできっと今までで一番酷い事を言いそうだ。
「だから…ただの…幼なじみよ」
「えーッ!うっそーっ!絶対違うよ〜!一体二人の間に何があったの?どんな過ちがあったの?」
しつこいぞナノカ!
俺は途中で突っ込もうと思ったけど俺が口を挟むとボロ(俺=キミカ)っていうのが出そうなので黙っていた。
「だから!…もう本人居ないから言うけどさ」
いや、いる。ここにいる…。
「キミカは私にとってヒーローだったのよ」
「え?」
「は?」
俺とナノカは思わず声が出てしまった。
「だ、だから…。私、小さい頃、イジメられててさ。そのときに助けてもらったのよ。キミカにね。私にはヒーローに見えたの。だから昨日、助けてもらった時に、一瞬その時の事を思い出して、デジャブって奴?」
俺は変身後、ビッチを助けた時のことを思い出していた。確かあの時、ビッチは「キミカ」って言った。あれは俺の事じゃなくて…いや、正確には俺の事なんだけど、男の過去の俺の事だったのか。
本当に幼かった頃、俺の近所の友達はビッチだけだった。
ある日、俺は普段ビッチと遊んでた公園に行ったら別の地区から来てた男女の児童どもがビッチをイジメてた。確かその時俺は一人でそいつらに向かっていって喧嘩したんだっけな。喧嘩なんて多分やったのはあれが初めてだったから、相手が男だろうと女だろうと、俺が動けなくなるまでボコボコに殴ってやったな。まるで俺がキチガイみたいに見えたんだろうか、そいつらは逃げていったような気がする。
でも俺はその記憶はかなーり古い記憶だから思い出そうとしなきゃスルーしてたな。
「そのユウカっちが『キミカ』って呼んでる人ってどうなの?カッコいいの?」
「女の人よ。女の子。私よりも年下っぽい。髪は黒で目も光を吸い込んでしまうような漆黒の色。滅茶苦茶かっこよかった…。身体が無重力になったような気がして、その子と一緒に飛んだの」
「と、飛んだぁ…?」
明らかにバカにするような顔でナナカが言う。そりゃそうだろな、普通の人は飛ばないもんな。飛んだって、麻薬でもやって『とんだ』んじゃねーの?って顔で見てる。
「飛んだのよ!ほんとだから」
「あははは」
「ほんとだってば!」
「またまたご冗談を」
ビッチは俺のほうをみて、
「ねぇ、見てたでしょ?飛んだよね?」
うーん。確実にこの人、架空のヒーローキミカっていう設定が染みこんでるな。ま、いいけど。
「うんうん、飛んだ飛んだ」
「ちょっ、ちゃんと見てたの?」
「黒髪の女の子がいたのは見てたけど、飛んだかどうかは見てないや…。天井崩れてきて周りが埃だらけになってたから」
「あ、そっか…」
ビッチはさっき見せてた「幼い頃のキミカとの思い出を語る悲しげな顔」から、「アイドルのコンサートを思い出すような萌え萌えの顔」で、
「はぁ〜…。また会いたいなぁ。キミカ」
と言ってる。
こりゃ完全にファンになった感だな…。