12 ヒーローインタビュー 1

その日、学校に行くのがとても億劫だった。
きっと色々と質問されるんだろうな…。などと思っていた。俺が変身後にビッチを助けたのだから、「あの力は何?」「あの格好は何?」「いつも悪の組織と戦ってるの?」とか聞かれそうだ。アメリカンコミックのヒーローだったらそのあたりは変身した後の姿が全然本来の姿と違うからわかんないんだろうけど、俺のは本来の姿と同じだからなぁ。
前に鏡の前で変身前、後を比較してみたんだけど、その差と言えば、髪の色や目の色が変身した後は戦闘服がそうであるように漆黒になっていたぐらいだった。普段はクリーム色?という奴かな。
教室に入ると昨日のテロの話でもちきり…かと思いきや、そういう時事な話は学生の間ではそれほど話される事はないみたい。昨日のバラエティー番組の話だとかアニメの話だとか部活の事だとか…。で、肝心のビッチの前に俺が姿を現してもあんまり反応という反応はない。
「昨日大丈夫だったの?」
とか言われるので、
「あ、うん。無事に帰ったよ」と答える。
俺の中に色々とスカーレットとの戦闘の記録が無理矢理に再生されたりする。あれだけの事があって「昨日大丈夫だったの?」って意外とあっさりだな。流石はビッチだ。
「ふーん」
とか言いやがる。正直、ビッチにお礼を言われるとは思ってはいないけど、実際にこうやって何も言われなくてただ普段と同じ様にされるのもなんか嫌だな。命助けてあげたんだから何か言えよと。
それからナノカも登校してきて、
「おはよーっ!ユウカ、昨日大丈夫だった?」
「え?うん、大丈夫。助けてもらったの」
そうそう。俺にね。
「え?誰に?警察に?」
違う違う。俺だよ俺俺。
「キミカに助けてもらったの」
やれやれだぜ、俺だよ。俺。すごいでしょ?
「キミカっちに助けてもらったんだ!」
とナノカは俺を尊敬のまなざしで見つめている。そうだ、俺を崇めよ!跪け!ははは!人がゴミの様だ!
「違うわよ、そっちのキミカじゃないよ。なんでキミカに助けてもらわなきゃいけないのよ。そりゃ途中まで一緒だったけどさ」
え、ちょっ…。
「え?キミカって、キミカっちの事じゃないの?」
「違う違う。私がキミカって名付けただけ」
おおおう、どういうこってぇ、あのアクシデントのショックで頭の配線がイカレポンチになっちまったのかい?ビッチさんよぉ?俺が助けてあげたんだよ!気付けこの野郎。それともわざとボケてるのか?
俺は「あたしが助けてあげたんだよ、変身してね」って喉まで出かかって罵声混じりに言ってやろうかと思ったんだけど、いや待てよ?って考えたね。この脳みそお花畑なビッチさん、本当に俺と同一人物だと思ってないのかな?あえてバラさなくても黙ってやり過ごしておこうかな。
で、あえてキミカって名前を持つ俺がビッチに質問する。
「なんでキミカって名付けたの?あたしと似てたから?その人」
「はぁ?似てない。全然似てないよ。キミカっていうのは私の幼なじみの男の子がいるんだけど…ほら、あんたの彼氏だった人よ。その人に凄く似てた。だからそう呼んだの」
このアマ、マジで言ってる…のかな?
「似てるって言ったって…」
女の子でしょ、どこをどう似てるのか…?言おうと思ったけどぐっとこらえた。このビッチさん、ホントに俺の事だとは思ってないみたいだ。そっとしておこう。