11 東アジア開放戦線 3

「キミカちゃんは歴史の…近代史の勉強とかはしてたのかにぃ?」
「歴史かぁ…ネットで調べたらWikipediaに載ってるから勉強してないな、あんなの覚えるのって頭でっかちで知識をひけらかすだけが楽しみの寂しい大人の趣味なんじゃないのかな。やっぱり人間の頭って考えて初めて使えるんだと思うよ。記憶させるだけならコンピュータに任せていればいいしさ」
「おーっと…。それ以上僕の価値観を否定するのは止めたまえにゃん。賢者は歴史から学ぶ。バカは経験しても忘れる。僕ちんが尊敬するアインシュタイン博士のありがたーい言葉だにぃ」
「なんか、色々違う気が…。でもあたしは世界史とか全然だから違いますよなんていう資格がないんですよね。まぁ仕方ない」
「ふぅ…では、近代史から説明するにゃん」
「はい」
ホログラム映像には地球儀が映し出されている。
「これが中国」とデブは小学生でもわかるような事を言い始める。「これがアメリカ」うんうん、わかってるってば、バカにしてるのかよー。「これは?」と指した場所は…。
「日本じゃん」
「ご名答」
「歴史の勉強でしょ…地理じゃないよね?」
「地理じゃないにゃん。えと、つまり、日本という国は昔から『貧乏人が沢山住んでて、一部の野心の強い権力者が国を牛耳ってて、世界征服を狙ってる中国』っていう国と、『金持ちが沢山住んでて、沢山の権力者が保身に走って、野蛮な国が攻めてくるのを怖がっているアメリカ』っていう国の間に挟まれてるんだにぃ」
「へぇ〜…そういう解釈は初めて聞くなぁ」
「それで、ある日、中国が日本を攻めてきまして、もし中国が日本を占領すればアメリカとは太平洋を挟んで向きあう事になる、それはヤバイ、と考えたアメリカは日本と後は台湾だとかインド、インドネシア、マレーシアだとかの色々なアジアの国々と協力して中国という国を地図から消してしまいました。あ、朝鮮もついでに」
「でも地図にはちゃんと残ってるじゃん」
「これは形だけだにゃん。国としてはもうありません。『東アジア解放戦線』…それは国際裁判を逃れて当時の権力者達が逃げ込んだところになるのかにぃ」
「あぁ…」
俺はそれであのアラフォーのスカーレットが言っていた言葉を思い出した。テロリストではなく軍隊だとか、国だとか言ってたのはこの事だったのか。