11 東アジア開放戦線 2

俺はてっきりホログラムに例のSM野郎のえと、スカーレットだっけ、そんな感じの名前の奴の姿が映し出されるものだと思ってたんだけど、大量のグラフやら数値やらが出てきてさっぱりわからんちんの状態になった。
「ごめん、数学は全然ダメなんです」
と前置いて言っておく。
「まー、コンピュータの分析結果をそのままだしてるだけだから気にしなくてもいいにゃん」
「この結果はなんて解釈出来るの?」
「スカーレットと聞いて名前がぴんと浮かんできたんだにゃん。対戦時に米帝が使ってたスカーレットミサイルの事だにゃん」
「あれがミサイル?悪趣味なミサイルだよね…」
「ミサイルというよりもミサイルに搭載されてる装置だにぃ。スカーレットは開発時の識別コードみたいなもんで、戦艦なんかやらはファランクス以外にも攻撃を防ぐためのフィールドを展開するけども、スカーレットはそれを無効化してダメージを与えるもので、フィールドを中和させるような超強力なバリアを展開するんだにぃ。多分、それをスーツ化して装備してるんだと思う…」
「えと、つまりあのスカーレットって女…っていうか、あのスーツは、あたしよりもパワーが上っていうこと?あたしよりも性能が上っていうこと?作っている素材があたしよりも高価なもので作られているっていうこと?念入りにメンテが行われているってこと?マッドサイエンティストの科学力をもってしても勝てないほどに敵は強いということ?」
デブはメガネをキリリとあげながら、ちょっとムスっとしたような顔をして額から汗を一筋垂らさせた。汗が出てるのはいつものことです。
「…ま、まぁ、兵器っていうのは色々ありまして、単純に力比べをするものじゃないんですお…スカーレットのプラズマフィールドは確かに強いけど持続性がないんだにゃん。そもそも目標物に突っ込んでいって最後は爆発するミサイルに搭載されていたバリア無効化装置なので、あんまり長持ちしてもしょうがないんだにぃ」
「なるほど…。長期戦に持ち込めればこっちにも勝機があるのかな」
「まぁ、敵もその弱点を熟知してるから、長期戦になるような戦いはしないと思うのですお。一気に攻めてきてダメだったらすぐに撤退、今まで東アジア解放戦線が繰り返してるテロ手法ですぉ」
「ああ、そうだ、そうそう。言ってたよ。東なんとか開封戦線とかって。それってなんなの?テロリストの名前?」
デブは難しい顔をしながらさっきのアンティークなリモコンをいじり始めた。今度は俺でもわかるようなものがホログラムに表示されてくる。ニュースやらの切り込み映像や雑誌の切り抜きだとかがそこにあった。
「まぁ、なんというか、この辺の説明をすると左だの右だのの人達がうるさいからあまりしたくないのですが、キミカちゃんがこれから戦おうとする連中はそういう風に、自分の背後に思想っていうか、正義を構えた連中なんですにゃん。つまり、正義と正義のぶつかりあいだにぃ…」
そう言いながらデブはアンティークなリモコンを落ち着きもなくいじっていた。