10 スカーレット様登場! 2

テロリストの連中は宝石店を襲って、そこで盗んだものをそのままこの戦車へと運びだして逃げるつもりだったらしい。なんて派手なパフォーマンスなんだ。テレビ向けのテロリストか?
俺が戻ってきたのを見て、マヌケにも宝石を持ち出して両手がふさがっているテロリストどもは「戻ってきやがった!」とでも叫んでいるのだろうか、俺には中国語はわかんないからなんて言ってるのかはわかんないけど、それとなく雰囲気で慌ててる感じはわかる。
俺は再び武器リストからさっき格納したレールガンを取り出して両手が塞がって慌ててるマヌケ野郎どもに一斉掃射した。宝石をまき散らしながらそいつらはバタバタと倒れていく。
「悪は滅びるのみ」
俺はデパートの奥のほうへとどんどん進んでいく。俺とビッチがさっきまでいたブティック、そしてその隣に変わり果てた姿の宝石店がある。俺が撃ち殺したのは全部男だった。強盗団っていうか、テロリストにはあと女がいたと思うけど…。
と、俺が宝石店の中で生き残ったお客さん、店員さんに、安全な場所に避難するように言っていると、
ゴオッ!と風圧、というか衝撃波が俺の頬を中心に吹き飛んできやがった。
俺は何が起きたのかわからず、吹き飛ばされた。壁を突き破って吹き飛ばされた。その後品物の中をゴリゴリと吹き飛ばされ続けて、また壁を突き破って、品物の中をゴリゴリと吹き飛ばされ続けて、また壁を突き破って、品物の中をゴリゴリと吹き飛ばされ続けて、また壁を突き破って、品物の中をゴリゴリと吹き飛ばされ続けて、また壁を突き破って、品物の中をゴリゴリと吹き飛ばされ続けて、また壁を突き破って、品物の中をゴリゴリと吹き飛ばされ続けて、また壁を突き破って、品物の中をゴリゴリと吹き飛ばされ続けて、また壁を突き破って、品物の中をゴリゴリと吹き飛ばされ続けて、また壁を突き破って…デパートの外に吹き飛ばされた。
おいおい、ここ笑うところじゃないよ。
「いったぁあぁぁああぁいいいぃ!!」
俺が吹き飛ばされて穴がぽっかりと開いているショッピングモールの壁。これはいい芸術作品…。じゃなくて、どっから狙ってきた?
『ふひぃぃいいい!キミカちゃん、何してるんだおぉ?今ニュースで大変な事になってる。デパートにテロリストが入ってる。警察と軍も出てる。ふひひッ』
あ、デブと通信が入ってるのか。
『大変だよ、大変。てーへんだ、てーへんだ。吹き飛ばされた』
『あれ?も、もう戦ってるのかおぉ?』
『うん、バリバリ戦闘中』
『相手は戦車?』
『わかんない。戦車はさっき倒したんだけど、デパートの中で思いっきり吹き飛ばされた』
『デパートの中…戦車がいるのかにぃ』
『見えないよ』
『光学スキャンするといいですお』
『え、何それ?』
『物体を透視して見ることができます、にひひ』
『…悪いことに使おうと考えた発明品ですね』
『違う!違うお!』
『どうやって使うの?アイテムリストにはそんなものなかったけど…』
『目にそういう機能が備わっているお。壁のほうをじっと見つめていると透視できますお。ふひひひひ』
「ったく、それを早く言えっての」
俺はデパートの壁のほうをじっと見つめると、どんどん壁をすり抜けて(ただ肉眼で見たものとはやっぱりちょっと違うけど)中身を見た。警官か軍の部隊らしき人達、ドロイドがテロリストが占拠していた場所に近づいていくのがわかる。階段から登っていってるみたいだ。そして逃げている人、伏せている人が見える。あとは銃を持って立っている奴達。多分これがテロリスト…で、円形のドロイドが数体。
「あれぇ?あたしを吹き飛ばすぐらいのって戦車の砲弾ぐらいじゃなきゃダメなはずなのに、いないよ?戦車」
と言っていた瞬間、さっき俺が突き破ってきたショッピングモールの外壁の穴からひょこ、と顔をのぞかせるものがいる。最初それはデパートの店員さんかな?と思ってたのだけど、なんか着ている服が全然店員ぽくない。っていうか、強いていうのならSMっぽいコスチュームだ。この人はSMプレイを楽しんでいたところをテロリストに襲われたのかな?
目が合ったぞ。
その女の人はニヤリと笑った。いや、その微笑って奴は俺がビッチに見つめられた時のいわゆる「これから勝負してあげるわ」って瞳なのだ。
そう、俺は直感で感じ取った。
俺の頬にパンチを食らわしたのはこいつだ。