8 動く大殺戮兵器 2

家に帰ってからシャワーを浴びている最中にふと気付いた。さっきの話で俺はデブに聞かなきゃいけないことが山ほどあるって事に気付いた。
変身前でも使える力、変身後にしか使えない力についてだ。さっそく俺はリビングに行ってからデブにその事を聞いてみた。
「うぉぉぉ!」
とデブが俺を見るなり驚いている。
「な、なに…」
「お、おきまりですかぉ。おっぱい隠して欲しいにゃん…あ、いや、やっぱりそのままでもいいかな…ふひひッ」
俺は別にそのままでもかまわないんだけど、デブの視線が俺の胸のほうから動かなくてそのまま血走った目で話されるのもキモイし、とりあえずタオルで乳首だけは隠すようにした。
「そうそう、聞きたい事があったんだよ」
「な、なんですかぉ…」
デブはチラチラと俺の胸のほうをみながら、胸に向かって言った。
「部活見学の時に変身後の力っぽいのが使えたんだけど、変身前でも使える力があるの?っていうか、変身後と変身前の違いって何なの?」
デブが「ん〜」とか言った後、俺に説明してくれた。
「グラビティコントロールは変身後の10パーセントぐらいの出力で使えるにゃん。キミカたんが動いている…というか生きているという事は、体内のダークマター変換炉が稼働してる事だから、変身していなくてもある程度使えるにゃん」
「ふむふむ」
「変身する時に自分の周囲の空間を歪める事が出来るのと同じで、実は武器とかストックしてある奴は取り出すことが出来るにゃん」
「ふーん。やってみようかな」
と、俺は目の前で指で四角を作ってみた。
「間違っても変身しちゃダメにゃん…僕の家が吹き飛んでしまうなり…」
「変身ってキーワードを口で言わないとダメなんじゃないっけ?」
「なんだか中二病臭くて辞めたにゃん…」
いや、もっと早くに気付けよ。
「えっと、じゃあ、武器をイメージしながら四角を作ればいいのかな」
俺は頭の中で武器を出すようなイメージをすると、再び以前みたいに俺が見たことのない武器とその名前みたいなのが出てくる。以前も使ったことのある刀を取り出した。
と、次の瞬間。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
デブの悲鳴。
デブが買ってきてたマウドナルドのテリタマバーガー(未開封)が刀の中に吸い込まれてしまった。
「あ、ごめん」
そっか、これ何でも吸い込むんだったっけ…。
「…」
しかめっ面になるデブ。そんなに悲しむなって、いつでも食えるじゃん。テリタマなんてさ。いまキャンペーンやってるんでしょ…。あぁ、テリタマにかける付属のバーベキューソースだけは残っていたみたいだ。それをペロペロと舐めてる…。
「これがグラビティブレードだっけ…?」
「(ぺろぺろ)…そうですぉ。(ぺろ)ブレードの表面にある黒いのはマイクロブラックホールを加工したもの(ぺろぺろぺろ)」
「ふーん。ブラックホールなのか〜。なんかイメージとちょっと違うな。もうちょっと大きなものかと思ってたけど」
グラビティブレードの表面は漆黒。漆黒という色は光を反射する時に黒く見えるから漆黒というのだけれど、これはその光すら吸収してしまうような、そういう意味での漆黒だった。そういえば変身した後のあのスーツにしても同じ様に漆黒だったな。
「変身後のスーツって黒いのももしかしてマイクロブラックホールの力?」
「それは僕の趣味…ディュフフ…」
「あ、そ」
「でもちゃんとバリアーは効いてるから安心するにゃん」
「バリアー?宇宙船とかが外壁に張り巡らせているあのバリア?」
「うんうん。『プラズマシールド』だにゃん。プラズマの力で衝撃波やらビーム干渉を中和させたりするにゃん」
そういえば最初の戦闘の時、俺は戦車砲(または対戦車ライフル?)を喰らった時に俺の正面にまるでガラスに弾丸が当たってヒビが入るみたいに見えた。これがプラズマシールドなのか。
「でも何発か銃弾喰らったらすぐに消えちゃったよ」
「まぁ…それはしょうがない…(ぺろぺろ)」
俺は再び指で四角を作って、頭に浮かんでくる武器を一つ一つ全部出してみようと思った。とりあえず全部説明してもらっておかないと次に何かと戦う時にまた大変な事になる。