7 学園見学ツアー 6

「水口逃げた!あははは!逃げた!」
もう菜々香は水口先輩などという敬意を示して呼ぶ呼び方もしなくなった。なんか珍しい動物でも追いかけまわすような目の輝きをしながら菜々香は「そっち逃げた!キミカちゃん、反対側から挟んで!!」とか言ってる。なんか面白そうなので俺も付き合うことにした。プールに飛び込んだ水口珍獣を左側から菜々香、右側から俺がじわじわと責める。
「やめろ!お前ら!マジでやめろ!」
やめろって言われても、これから何が起きるのかこいつは分かっているのか?単に女子高生二人がにじり寄って来てるだけじゃねーか、情けねぇ。
「お、お前らには先輩の威厳って奴を保とうって気はないのか!」とか「来るな腐女子!」とか「ちょっ、君も同類なのか、キミカ君」とか言ってる。これは散々近寄らせて泳いで一気に逃げるという戦法をする前準備って奴だな。俺は見切ったぜ。
一方でそんな作戦を見切っていないペチャパイ菜々香はまんまと水口珍獣に近づいた時に逃げられた。だが水中でも俺の運動神経はいいらしい。今までカエル泳ぎと犬かきぐらいしかやったことがなかったぐらいの情けない運動神経の俺だったが、水中を魚の如く泳いで、奴の進行方向に立ちふさがったのだ。当然、奴はもう止まらず得ない。珍獣捕獲の瞬間だった。
「うううんんんおおおっっむむ」
と奴は俺の胸の谷間に顔を挟んだ状態で捕獲された。
「うおおおおお!」と、真っ赤になった顔を離す水口珍獣。
「捕まっちゃいましたね」
と俺が言ってみる。水口珍獣との距離はもう10センチぐらい。でも捕まったのは水口珍獣なのか、それとも今水口珍獣が俺の両肩を掴んでいるわけだが、俺が捕まったのか、見方によっては色々とある。
そこで俺は初めて、生まれて初めて、アニメ以外のシーンにおいて、男が鼻血を出す瞬間というものを目撃してしまった。プッと鼻から血しぶきがあがったかと思うと、血が垂れてる水口先輩。
おいおい、俺を間近で見ただけで鼻血かよ。
菜々香が俺を見て、
「え、ちょっ…(笑いながら)おっぱい見えてる」
おーい!!!この水着ぶかぶかじゃねーか!!伸びてるよこの水着!伸びた水着の肩ひもが外れてて俺のおっぱいがこぼれ出てる。ポロリしてる。ピンク色の乳首が露出してる。俺興奮した…。乳首が勃起しそうだったので、俺はそれを水着の中に押し込んだ。
「てや!!」
もう鼻血を出して失神してんじゃねーのかっていう水口珍獣にさらなる攻撃を加える菜々香。水泳パンツを脱がすという強行に及んだ。
「ちょっと、これ伸びてるよ。フィットするんじゃなかったの?」
「ん〜…フリーサイズって書いてあったんだけどね〜」
「水着でフリーサイズって何それ」
俺と菜々香はプールの真ん中で立ち尽くす水口珍獣をそのままにしておいて、プールから上がった。