7 学園見学ツアー 4

俺の想像する更衣室はいわばコンクリートの小さな小屋で辛うじて前は隠せる程度の木の板で仕切られた個室が絶対に人数分ないだろって感じで並んでて、結局クーラーもない部屋だからクソ暑いので外で着替えちゃったりする男子水泳部更衣室というものだったのだけれど、既に更衣室に入る前からその建物はスポーツセンターよろしくロビー、喫茶店(いくつ喫茶店あるんだよ)、そして更衣室へと続く廊下があるのだ。こりゃ絶対に外で着替えようって気持ちにならないな。
そして、ついに俺は初めてプールの女子更衣室に入ることになったのだ。ドキドキするな。こういう事があるのだったら女になったのも悪くないかな。
「失礼します…」
と俺はじわじわと更衣室の奥地へと入っていく。もう後戻りは出来ないぞ。もしかして今男に戻るとかいう展開はないよね?あったらもう絶交だかんね!
「キミカちゃん、はやくこっちこっち」
なんで早くしなきゃいけないんだよ。と、菜乃香の言動を怪しみながらも、俺は変態レズビアン女と共謀して下着泥棒に入っているオヂサンよろしく足音を立てずにそそくさと更衣室の中を進んだ。
「へぇ〜。幽霊部員でもちゃんとロッカー用意してくれてるじゃないの。名札まで作ってもらって」とビッチが言うように、目の前には「菅原」と名札のついたロッカーがある。うろきょろと周囲を警戒してみたが他に着替えている人は居ないみたいだ。
「あたし水着持ってきてないよ…」と言ってみる。持ってきていないどころか、持ってもいないしな。
「いいのいいの、私の貸してあげるから〜」
「2着持ってるの?」
「うんうん、2着でも3着でも」
いや、そんなにいらないでしょ…。
菜乃香はロッカーの中にあるバッグからプラスチックの袋に包まれてる水着らしきものを取り出した。水泳部が着るような競泳水着じゃない。普通のスクール水着なんだけど…。
「え、何それ…濡れてない?濡れてるよね?ビショビショだよね。搾ってないよね。絶対それ、泳いだ後の奴だよね」
菜々香はプルプルと手を震わせながら黙ってその濡れた使用済みのスクール水着を俺に手渡す。着ろというのか?これを?!
「体験入部なんだから大丈夫だって!」と菜々香。「いや、あんた、さすがに私でもそれはヒクわぁ」とビッチ。
「ほらほら、まだ温かいうちに」いや料理じゃねーんだからさ、と思っていたら、さっさと菜々香は俺のブレサーを脱がしてブラウスのボタンに手をかける。あっという間に俺は全裸にさせられた。
「げ」
なにが「げ」なんだよ…。
「なんですとーっ!!キミカっち滅茶苦茶スタイルいいじゃん…うぅ…。もしかして裕香よりもスタイルいいかもよぉ?」と言いながら菜々香は俺のおっぱいをムニムニと揉んだ。突然揉まれるので身体がびくんとなる…ちくしょうめ。
「ま、まぁね」
と俺は身体を捩らせて言う。
「やーん!」と言いながら、菜々香は俺を抱きしめてくる。なんだかぺっちゃんこの胸板が顔に当たって痛いです。
「あの、顔が、痛いです」と言う俺。
「あぁ、ごめん、私も脱ぐね」
いや違うだろ。まぁ、脱いでもらっても俺は構わないがぺちゃぱいには興味はないぜ。と思うがさきにするすると菜々香は脱ぎ捨てて(さすが水泳部員は着替えるのが早い)すっぽんぽんになって、再び俺を抱きしめてくる。うわぁ…ペチャパイだけど、体温が伝わってきてエロい気分になります…。肌がすべすべです。いい香りがします。あぁ、母さん、今、俺、知らない女の人の胸板に抱き締められています。
「あの…ふたりとも、なに抱き締めあってるの…」
ビッチの声で俺はハッと我に帰った。俺は今すごいスケベな想像をしていた。なんという変態。でもここは紳士に、いや淑女に、「ふ、深い意味はないよ」と胸板さんを離した。
「うぅ…羨ましいなぁ。キミカちゃん。そのスタイルなら私が男だったら惚れてる。告白した後、絶対に襲ってる」
いや、あんたは女でも襲ってるでしょ。
すこしムッとした表情をみせるビッチ。
「ふんっ。スタイルなんて運動で調整できるわ。今私も調整中なの」とか言ってる。贅肉の調整はできるだろうけど骨格は調整しようがないだろうに。俺の身体はそもそもありえないアニメの中の美少女を変態野郎(デブ)が肥えた目でより直ぐって選び出して現実っぽくカスタマイズしたものだぞ。これに勝てるのならアニメなんてそもそも発達しなかった…。というのは置いといて、
「これ、本当に着るの…?」
「うんうん!はやく!」
濡れてて着にくい。それに初めて着るスクール水着というのは、なんというか、このぺったりとフィットする感じが凄く嫌だ。身体にぺったりとひっついて、冷たい。気持ち悪い。
「きゃああああああ!!!」
何、なんだよ、なぜ菜々香は叫ぶ。
「私の股間とキミカっちの股間がいま合体してる!!!」
あぁ、そうか、そうだね。これ君の水着だったね…。