6 気になる転校生 8

お昼休み。
俺はあの巨大なカフェテラスでどんなものが食べれるのかとワクワクしながら一人そこへ向かおうとしていた。ってところをビッチに止められて、
「一緒にご飯食べない?」と言われた。続いて、「あ、誰かとご飯食べる予定があるなら別にいいわよ」とも。
「別に、一人だけど」
この学校で知ってる奴はビッチを除いてあいつしかいないから、一緒に食べるとしたらあいつとだけど、担任の先生と食べるっていうのもなぁ。という事でおれはビッチと一緒にお昼を食べることにした。
そういえば何年ぶりだろうかな。ビッチと一緒にご飯食べるのは。
幼稚園の時だった小学低学年の時だったか忘れたけど、その日ビッチの家のお母ちゃんも俺の家のお袋も学校が午前中授業の日だと思っておらず弁当を作ってくれた。俺とビッチは家に帰る途中、どっかで弁当を食べようって話になったんだ。近所のに流れてる小川。そこの橋のしたで二人で弁当を並べて食べてたな。沢山の日々を過ごしたけどそんな些細な、特にインパクトの無いような光景が頭の中に残っているもんなんだな。よっぽど俺の脳みそはそれを幸せだと感じたらしい。
などと思い出にふけってもしょうがない。俺は今再び、ビッチと一緒に昼食を食べようとしてるけど、色々あった。色々って言葉じゃ足りないぐらいに沢山の色々があった。そしてその色々の中に俺が女になっちゃう、じゃなかった、一度死んで、女として復活してしまうってのもあって、何年かぶりにビッチと一緒に昼食を食べる今の俺は男ではないんだな。
「こ、この方は誰ですか?」
そんな思い出に浸りながら俺はビッチと一緒に廊下を歩いていると、教室から出てきた女子がビッチに向かってそう言った。この方って俺の事か。
「ああ、今日転校してきたの、藤崎紀美香さん」
その女子はおっぱいの大きなビッチに比べると洗濯板…いや、まな板みたいなおっぱいをしていて髪はショートカット、顔は紺縁のメガネで覆っていて、そのまま男の制服でも着せようものなら男の娘になっちゃいそうな感じの女子だった。背はひょろりと長く、でもその背を誇張するような素振りではなく、むしろ目立つのが嫌なのかわざと屈めている。その姿はなんともひ弱なイメージがある。
「よ、よろ、よろしくお願いします」
頬を赤らめて俺に挨拶する。えっと…。この人誰?
「この子は菅原さん。菅原菜乃香(すがわらなのか)さん」
「あ、よろしくお願いします」
菅原は俺とビッチを交互に見ながら、
「お、お二人は、ど、どどど、どいういう関係なのですか?」
どういうって言われても、幼なじみ?
「転校生とクラス委員だけど…」
いやまぁ、間違ってはない。いや、その二つの属性を並べて言わないでくれ。違うだろう。
「えええ、なんだかそんな雰囲気じゃないですよ。どこかで一度会っているような」
鋭いな…霊感でもあるのかこの人。
「お葬式で一度会ったよ」と俺はそれに回答。
何か悔しい思い出でも思い出したのか、ビッチはぷいっと顔を逸らす。
「え〜。なんだぁ…。あ、あたしはてっきり幼なじみみたいな感じかと…」
鋭い!なんで?
「え、なんで私がこの人と?」とビッチ。そりゃそうだ。
「ん〜…な、なんとなく」