6 気になる転校生 5

デブの家から車で10分もしないような場所、街路樹が並んだその先には市内でもっとも大きな公園がある。その手前に俺が今まで公園の駐車場、と思ってた場所、そこに聖なんたら学園があった。聖なんたらという名前に負けないぐらいに高尚な作りをした歩道や道路、街路樹、しかもその街路樹などを整理する園芸用のドロイドまで。随分とお金をかけていらっしゃる。
もう授業は始まっているような時間だった。
登校する生徒達の間をこのデブが運転するボログルマが通るのではないかとちょっとヒヤヒヤしたけどそえはないみたいだ。広い学園内にはテニスコート温水プールにグラウンドはもちろんのこと、学食と休憩所が一緒になってるような巨大なカフェテラスなんてのもある。俺が通っていた高校には学食なんて無かったから弁当を持ってくるか外にあるコンビニに行くしかなかったぞ。しかも夏場なんてコンビニに行って帰ったら汗だくになって御飯食べる気力すらなくなってさ…。ここにはクーラーがあって良さそうだなぁ。
デブは車を職員用の駐車場に駐車しやがって、職員用の入り口から学校へと侵入…いや、入りやがった。おいおい。なんか手順とかあるんじゃねーのかよー。先生に会ってから「うちのキミカをよろしくお願いします」だとか。
デブはそのまま職員室の前に俺を待たせてから中へとずかずかと入りやがって、出る頃にはなんとか教授とかが来てるような白衣に似合いもしないメガネなんてつけちゃってさ…って。え?そのまま俺を引っ張って教室のある棟まで行った。
2年A組…。そういや俺は高校2年だったっけ。随分と高校には行ってなかったような感じになっちゃったな。ようやく思い出したよ。クラスメートとは葬式であった以来だったっけ。
「っていうかさ、担任の先生に会ったりしないの?いきなり教室にきちゃって大丈夫なの?いちおう保護者でしょ?」
「た、担任の先生は、ぼ、僕だぉ!」
「え…え?ちょっ」
すっごい険しい顔になってるデブはちょっといつもと雰囲気が違っていた。狂気を感じるというかブチキレ寸前というか。そのデブに手を引っ張られながら俺は教室の中に入る事になった。
デブは思いっきり教室のドアをバンッと開き、教壇まで駆け上がっていく。俺と一緒に。あまりのインパクトにきっと学校に不法侵入した変態野郎が一人の女子生徒を人質にしたまま教室に入ってきたんじゃねーのかっていうぐらいの驚きの顔で生徒たちはデブとその隣にいる俺を見てた。
「今日から貴様らの担任になる石見だぉ!!!よく覚えとけこのリア充ども!!逆らったら男だろうが女だろうが幼女だろうが全校生徒の前でレイプするから覚悟しろですぉ!!!」
しーん。