6 気になる転校生 2

「と、とにかくダメだよ!虫も寄ってくるし」
「むし?」
「キミカは、ぼ、僕が考えうる限りの最高の美少女にしたんだよ…。絶対にイケメンヤリチン野郎に出会った瞬間5秒以内に強姦されてしまうぉ…」
「エロゲのやりすぎ」
「と、とにかくダメなものはダメなんだってば!」
こいつは正攻法ではダメだな。頭の中にウジが湧いてやがる。もう病院に行くレヴェル。そういう奴にはちゃんと理解できるような世界観で話をしなきゃダメだって死んだばあちゃんも言っていたかも知れないし、言っていなかったかもしれない。
「岩見くーん」
「ダメだぉ…名前で呼んでもダメだぉ!」
「ふふっ、呼んでみただけ」
「そんな可愛らしく言ってもダメ!」
「じゃあ岩見くんがプレイしてるエロゲの中での話をしましょう。その世界の中には一人の女子高生が存在します。さて、彼女は学校に通っているでしょうか?それとも家に引き篭っているでしょうか?」
「が、学校に通っている…。家に引き篭っている設定の女子高生は、まぁ、い、いるかも知れないけど、でも特殊なパターンですぉ。やっぱり病弱なとか、学校でイジメにあって、とかそんな設定とセット…」
「そう、矛盾している!」と俺はびしっデブのほうを指さして、「自分はエロゲに登場するような可愛い女の子を作ったくせに、エロゲの設定ではなかなか存在しない不登校の女の子に…いや、実際あたしはどこの高校にも通っているわけじゃないから、中卒という微妙な位置づけの女の子になってる。それでいいのでしょうか?否!いいわけがないです。狂っています。脳汁が耳からたれています!童貞という不治の病に冒されています」
「うぅ…のうじる…うぅ…」
デブは力なくその場に膝を落として崩れ、両手を地面についた。そしてプルプルと身体を震わせながら「わ、わかったぉ…で、でもキミカが行く学校は僕が決める!!」
「エーッ!」
「ダメ。それだけは譲れない。ふひひ…虫が寄り付かないところにするのだーッ」
「寄り付かないってば。あたしは中身男なのですけど…寄り付こうものなら焼き殺してあげるよ」
と、まぁ、実際に焼き殺す事が出来るかは別として、俺も女のシリを追いかけまくってる男は嫌いだからな。そういう意味では同意。俺もこれでようやく高校に通えるな。やっぱり学生は学生らしくしないと、なんだか不良みたいなシケた気分になってしまう。
さっそく高校への入学手続きをしてくれるのだと思ったらそうじゃなかった。デブはよっこらっしょと声をあげると椅子に深々と腰掛けて目の前にあるネット端末の電源を入れ、何やら色々と検索を始めやがった。そっとうしろについて覗いてみると「聖なんとか学院」だとか「聖なんとか学園」だとかのとにかく頭に聖ってついてる変な学校ばかりでてくる。ほら、なんとか南高校とか、なんとか東高校とかでいいんだよ、そんなお金持ちの人が行くような学校じゃなくってさ…。
「うひひッ…聖エクスペリオ学園…これなんかどうですかぉ」
「エクスペリオ…なんか響きが嫌だなぁ」
「んじゃこっちの聖アイファーン学院」
「その聖なんとかってなんとかならないの。聖ってつかないやつがいい」
「た、たとえば…」
「なんとか工業高校とか」
「ダメ!ダーーーーッンメ!!!」
「なんでだよ」
「工業高校の共学なんてうさぎ小屋のオスとメスのうさぎみたいな状態になるぉぉ!!!挨拶代わりにセックスするような場所ですぉぉ!」
「君、工業高校の人に殺されるよ」