15 幸せのかたち 2

神殿は一つの通路ではなく、広大なダンジョンのように複雑に絡み合っていた。そもそもはLOSの世界が生まれた頃から初心者向けのダンジョンとして造られた経緯がある。初心者向けとは言っても一応はダンジョンなのだから、それを無理に神殿と呼んでしまうと神殿らしからぬものになってしまうのは仕方の無い事だった。
外は砂漠なのだが神殿の中はひんやりとしていた。
二人は無言のまま、魔法の仕掛けによって照らされた松明が並ぶ通路を風雅と豊吉が進んでいく。
さきほどから豊吉はずっと自問自答していたのだ。
(思い出せそうで思い出せない…なんなんだ?)
ふと、自分は別として風雅はどうなのだろうかと豊吉は考えた。
「風雅くん、と言ったね。君は家族のところへは行かないのかな?」
「あぁ…自分も豊吉さんと同じで、あまり会いたいとは思っていませんよ」
「そうなのか。理由は…あまり聞かないほうがいいかな」
「まぁ、あまり深い理由はないんですけどね。自分は結婚はしてませんから、家族というより親かなぁ。親にいつもべたべたと一緒にいるのが嫌というのがあるのかも知れません」
「私は…」
「?」
「ん〜なんなんだろう。家族と過ごした思い出が浮かんでくるのに、じゃあ会いたいかと言われると、何故か会いたいとは思わないんだよ」
そしてもう一度、記憶の中をサーチする。一体なぜ自分は思い出せないのかという疑問を解決するために。
そして豊吉は声を聞いた。耳のそばで聞いたわけではない。記憶の中から声が呼び起こされて、それが頭の中を流れた。「聞きなれた声」という分類に属する記憶。
(「ねぇ、あなた」)
(「今週の日曜日ね」)