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パーティも終盤に近付いていた。
はつみはそろそろ言うべき事を言わなければならないと感じていた。
既に両親には話していた。だからか両親ははつみの気持ちを察してか、はつみに向かい頷き、そしてはつみも話す事を決心した。
「みなさん…今日は集まってくれてありがとう。みんなに話しておきたい事があるの。私は旅に出ます。口寄せの術の修行の旅、それと真理を探す旅…。とっても身勝手だと思う…。帰ってきてまた旅に出るなんて。でも口寄せの術は旅の中の苦行で磨く事が出来るの。必ず、必ず立派な口寄せ師になって帰ってくるから。それまでみんなッ」
最後の言葉までは言えず、はつみの声は涙に埋もれた。
蹲りそうになるはつみを父親が抱き締める。
「はつみ、辛くなったら村のみんなの事を思い出すんだ。思い出はどんな時でも変わらない。本当に辛かったらいつでも帰っておいで。おまえには帰る場所があるんだ」
その言葉を聞いてはつみは声を出して泣いた。はつみの母親もそんな父と子を見て涙ぐんだ。
翌朝。
村人達が総出ではつみを見送った。はつみの母は豪華装飾のしてあるククリを手渡した。
「おじいちゃんがはつみにって。これはおじいちゃんが若い頃、召喚魔法の修行をしていた時に使ったものなんだって。召喚術師のものだけど、お守りになるかも知れないから」
「ありがとう…おじいちゃんにもありがとうって伝えておいて」
村人達に見送られる中、はつみは印を結ぶと地面が割れ、闇から巨大な山犬が現れた。村人達も始めてみる口寄せの術に驚いた。一度は見ていた親戚の子供達は誇らしげにしている。その子達にとってははつみは一家の誇りのようなものなのだ。
山犬に跨り村を後にするはつみ。
両親はその姿が森へと消えるまで大きく手を振って見送った。