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収穫に忙しい時期、村を上げての歓迎会とは行かなかったがはつみの家では家族と親戚達で歓迎会が行われた。
テーブルの上には収穫したばかりのアケディア梨がこれ見よとばかりに中央に盛られて、周りには梨を使った地元の料理が並ぶ。鶏肉の梨蒸し、梨と野菜のサラダ、干し梨、梨の朝漬け…。イスプリスはアケディア地方の特産品で有名な村だった。
両親との再会で懐かしさと喜びで泣きじゃくったはつみは目の周りを赤くしてパーティに参加していた。それを察してか知らずか親戚の子供達ははつみの周りに集まった。
「はつみねーちゃん、召喚魔法を見せてよ〜!」
「召喚魔法じゃないのよ。口寄せの術と言って、異界から神様を呼び出せるの」
親戚達もはつみに注目する。中でもパイプを吹かしていた最長老の男は興味深そうにはつみに話しかける。
「ワシも昔、召喚魔法の修行に明け暮れた時もあったが…その頃は東洋の云々は禁術となっておってな。見るのは初めてなのじゃ。見せておくれ」
はつみは頷き、指で印を結んだ後、掌を地面に広げた。
「ほほう…東洋の召喚魔法は呪文を詠唱しないのか…ふむむ」
次の瞬間。地面には東洋の古代文字が光輝きながら浮き上がり消えた後、真っ黒い裂け目が現れた。裂け目を覗き混む親戚一同。そして裂け目からは背中に古代文字の模様のあるリスのような動物が現れた。
「おいで、はつ丸」
はつみはそう言うとリスのような動物が彼女の肩に乗れるように手を差し伸べた。はつ丸と呼ばれるリスのような動物は彼女の肩へ乗るとその様子をまじまじと見つめる親戚一同を見渡した。
「これが召喚獣…いや口寄せ獣か…ふむむ、興味深いのぅ」
老人は一息ついたのかまたパイプを咥えて吹かした。
「口寄せ獣っていうか、式神なの。召喚魔法は召喚獣と契約してマナを代価に術者に従うけど、式神は術者と契約しないの。だからマナも使わない。でも代価がないから術者に従わない事もあるの」
はつみがそう答えると親戚の子供の一人が言う。
「はつみねーちゃん、馬鹿でマナが少ないからマナのいらない口寄せ術を勉強してるんだろ〜」
はつみはムッとして言い返す。
「私は馬鹿じゃないです〜!一度契約したらマナさえあれば術者に従う召喚魔法と違って口寄せの術は術者との信頼関係がとっても大切な術なの!馬鹿では出来ません!」