154 ハナガ…サイタ…ヨ… 3

「今日は私のコレクションの中でも、異色なものを持ってきた」
そう言ってニヤリと笑うメイリン
もうメイリンズ・コレクションは男子にファンクラブが作られるほど一部のマニアの心を擽るものになっていた。なにせミス・アンダルシアの美少女(男の子)でありドロイドバスターの4名がビデオ映像に取られているからな。
服を脱がなくても十分に魅力がある。
「異色なものって?」
と男子達の一人は興奮気味にメイリンに聞く。
「エロい映像、取ろうと思ったが意外なものが映ってしまった」
「へぇ〜…」
何やら期待させる物言いじゃないか。
まずは廊下を歩いているシーン。メイリンのメガネ視点だから、画面はそれなりに揺れる。まぁ、これはいつものこと。その視界に、それこそ『その手の人の嗅覚』でなければ気づかないであろう『一瞬』がチラリと映った。メイリンだからこそ気づいたのだ。
そう、一瞬だけ、向かい側の旧校舎の一室で金髪美少女が長身の男をソファか何かに押し倒すようなシーンが映ったのだ。俺の動体視力ならそれが誰なのか、わかる。
「え、ちょっと、キサラ先生ィ…」
「ええ?!」
俺がキサラって言葉を出したら男子が一斉に反応。
柏田キサラはドロイドバスターで当然ながらの美少女で金髪でおっぱいも大きいから男子には人気の高い先生。頭は金髪やブロンドに多いちょっとアレな人だけれども。
映像はさらに続く。
メイリンの嗅覚でキサラとソラが旧校舎の一室でエッチな事をしている、というのを嗅ぎつけたわけで、次に彼女がする行動は決まっている。まずは盗聴用カメラをその一室に仕掛けるのだろう…が、キサラもキサラで周囲に機械が作動している事を察知する嗅覚があるらしく、ソラと共に部屋に入って『情事』をスタートさせるも5秒ぐらいでソワソワと部屋を見渡し初め、
「あぁ!!!」
と声をあげるキサラ。背後に蛇だかムカデだかの形の小型ドロイドが…おそらくは物質変換能力で創りだしたんだろう、それがニュルニュルとカメラに向かって襲いかかって、レーザーのような攻撃を食らわせ映像はそこで終了…。
「どういうわけか、見つかってしまった…機材が勿体ないから、これ異常の追求は断念…」などと残念そうな顔で言うメイリン
メイリン嬢!機材代なら私達が出しますよ!」
男子達が言う。
「うむ。しかし、キサラはカンが鋭いからたぶん無理」
次に流れた映像は…。
メイリンのメガネではなく設置済みの小型カメラからだ。
水泳の時間の前の女子更衣室か。
って、おいいいいい!!!
俺の彼女の盗聴シーンじゃねぇかおいおいおいおいおいおい!!!
「何してんだよォォォ!!!」
俺はメイリンの首を締める。
「残念ながら、うまく撮れなかった…」
と、俺に首を閉められながらも残念そうに言うメイリン
「うまく撮れなかった…って?」
映像を見てみると、俺と同じぐらいに小柄で俺とは違ってペチャパイなキリカが他の女子達とは会話をするわけでもなく、一人コソコソと着替えているシーン。と、その時だ。
何故かキリカはカメラがある位置がわかったのだろうか、一直線にカメラをジッと見つめるのだ。キサラの場合は何か気配を察知して部屋をうろついたから「あー見つかっちまうな」ってのが視聴者である俺達にも分かったけれど、キリカの場合はあまりに突然、なんの予兆もなく、ジロッとカメラを睨んだからまるで『視聴者』である俺達が睨まれたかのような感覚に陥ったのだ。一斉に男子・そして俺達ドロイドバスターの4人は身体をビクつかせる。
すると映像の中に突如、ノイズが紛れ込むのだ。
バリッ、バリバリッ…。
バリッ、バリ…。
だが、俺は動体視力が凄まじいのでそのノイズに何が混じっているのか、わかってしまった…。他の人間にはわからないっていうのは怖い。俺と同じように怖い思いをして欲しいので俺はaiPadの停止ボタンをノイズの発生に合わせて止めた。
「「「「うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」
俺達4名のドロイドバスターと、クラスメートの男子が一斉に声をあげ、完全にaiPadの周囲3メートルまで飛び退いた。しかし音だけは『あ゛あ゛あ゛…』という奇妙な音だけは響く。
女だ。
目を繰り抜かれ、漆黒がその目のあったであろう奥に広がっている、女がノイズの中に紛れ込んでいたのだ。それがaiPadの画面いっぱいに広がって、口も限界まで広げて、『あ゛あ゛あ゛…』という奇妙な、どこから鳴らしているのかわからないような声を響かせてるのだ。
…。
…。
「おわかり、いただけただろうか?」
とかメイリンが言ってる。
「関わっちゃダメだと言っただろうがァァァァ!!!」
俺はメイリンの首を締めながら叫んだ。泣きそうな声で叫んだ。
クソッ!!メイリンが呪いのターゲットに…!!!
幸あれ!
「女子更衣室を盗撮する輩に不幸が訪れますように」
「「「「うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」
いつの間にか俺の彼女であるキリカが俺達の前に居て、aiPadをジロリと見て言った。
俺達4名のドロイドバスターと、クラスメートの男子が一斉に声をあげ、完全にaiPadの周囲5メートルまで飛び退いた。
顔を赤らめてキリカが言う。
「私の身体を見ていいのは、キミカだけ…ぽっ」
「うるさいよ」
コツンと俺はキリカの頭を叩いた。