106 愛なんてなかった 2

昼休み。
俺はキミカ親衛隊が作った騎馬に乗り1年のクラスがある廊下を闊歩した。周囲の一年達は何事かと目を白黒させながらキミカ親衛隊の騎馬をよけながら歩く。そうだ!どけどけ!俺様が通る…。
牛塚がいる教室の前で、
「姫!ここが奴がいるところです…」
と親衛隊の1人(騎馬を先導していた奴)が言う。
「よし、ひっ捕らえろ!!」
俺が命令すると、キミカ親衛隊(キミカファンクラブ団員)達はまるでユダヤ人を強制連行するドイツ兵のようにキリキリと教室へとなだれ込んで何事かと避けて通る1年達の中から友達と談笑していたストーカー(牛塚)を引っ掴み、廊下へと引っ張りだした。
俺が廊下に来ていたのが見えたのか教室から牛塚以外にもメイが嬉しそうな顔で出てきた。
キョドりながらストーカー(牛塚)は言う。
「せ、先輩?!どうしたんですか、そのムサ苦しい男たちは!」
「これはあたしの馬です」
まるで廊下に土下座するように転がっている牛塚、その見上げる先には180センチはあるであろう屈強な男達の造りだす騎馬があり、その上にはこのアンダルシア学園トップの女王に登りつめた俺がいる。
この間の高低差220センチぐらい。
そんな途方も無い高い位置からの響く俺の声は自分でいうのもなんだが、あたかも天の声のように聞こえるであろう。
「え?え?」
キョドる牛塚。
「それよりも!あたしの変な噂を流しているという輩がいると聞いています…心当たりはありますか?」
「…いえ、それは…」
嘘か?嘘をつこうとしているのか?
しかし側で見ていたメイはすかさず、
「牛塚さんが噂をばらまいていましたわ!」
「例えばどんな噂?」
と俺はメイに聞いてみる。
「キミカお姉様はパンティーの色は白しか履かないとか!」
むむむ!!
「キミカお姉様が早くに帰宅するのはお稽古があるからだとか!」
なるほどなるほど!!
「キミカお姉様の処女膜は破れても再生するとか!!」
ほうほう!!それでそれで?!
「キミカお姉様はウンチをしないとか!」
なるほどね!ウンチはしないね!
「だって事実じゃないですかァァッ!」
突然吠えたのは牛塚だ。こいつ何言ってんの?
「おい、貴様、何を言ってるんだ馬鹿か?」
と団員。
そうだそうだ。言ってやれ!
「キミカ先輩が履くパンティーは白しかありえませんよ!だって白が清潔で清楚なイメージなんですから!!」
こいつの思い込みだろうが、バカか。
「おい!見せてやるんだ!」
っておいおいおい!!
親衛隊は俺のスカートをぺろりとめくるとパンティー(青)を露出させた。それを見てショックを受ける牛塚。口を手で覆っている。
「え…なんで…青…」
「貴様!なんで勝手に決め付けるんだ!」
「だって…だって…白以外ありえませんもの!!」
あーあ、思い込みで噂流してもらっても困るんですけど。
俺は、「稽古だってしてないし、処女というのは当たってるけど、処女膜だって破れても再生はしないよ!(たぶん)」と言う。
「「「ななな!!なんだってー!!」」」
興奮している騎馬及び、周囲にキミカファンクラブ団員。
おい、興奮するな、騎馬ども。
「はぁはぁ…こ、これが処女様の美しい太ももはぁはぁ…」
騎馬を構成する1っ匹の団員が俺の太ももに頬を擦り付ける。…ウワァァァァァァ!!!ザラザラとした髭剃った後の男の頬の感触が太ももに伝わってきてウルトラキモチワルイ…。
俺はげんこつを騎馬2名に振り落とした。そして「トゥッ!」と軽く吠えて空高く飛び上がり廊下へと華麗に着地した。
その華麗な俺の姿を見届けた後にメイは牛塚を指さして、
「ただの思いこみですわね!牛塚さん、観念してキミカお姉様を諦めるのですわ!だってお姉様は牛塚さんのような『自分の価値観を他人に押し付けるタイプの人間が』大嫌いなんですもの!!」
「うんうん」
俺は深く頷く。
「そんな、そんな事ありえませんわ!キミカ先輩はこいつらに操られているのです!!こんな変人(キミカ親衛隊やメイを指差して)に囲まれているからキミカ先輩はおかしくなってしまうのです!」
これには親衛隊の1人が答えた。
「笑止!貴様はキミカ姫の事を何もわかっていない…。すべてが貴様が思い描いた妄想!我々はキミカ姫の真の姿を知ってるからな」
と自慢している。
確かにこのストーカーは妄想が激しい。いや、そもそも妄想が激しい事がストーカーの要素そのものかもしれない。
「し、真の姿?」
「ふふふ…我が親衛隊の間でももっとも秘蔵度が高い写真を紹介してやろう。貴様はこれを見ずしてキミカ姫を語っていたのだ。無知の知を知れバカ者が!」、と親衛隊が見せた1枚の写真は俺がコーネリアやメイリン、マコトに囲まれて談笑しているという珍しいシーンで、その中心に映っている俺は手に何かピンク色のピンクローターのコントローラーを握っていて、ローターのバイブ部分はパンツに当たっている。
っておいおい!これは俺がオフザケでみんなの前でオナニーした時の写真じゃないか!なんでお前が持ってるんだよコレを!!
「なんてものを持ってるんだよ!!!」
俺はその写真を奪い取り、
ボッシュート!テレッテレテー♪」
キミカ部屋(亜空間)の中に吸い込んだ。
「ウワァァァァァァ!!!なんて事するんですかァァ!!」
目の前で俺の手のひらの中から亜空間(キミカ部屋)に吸い込まれた写真を見て涙を流しながら叫ぶ団員。
「はい、団員Aさん、ひとしくん人形ボッシュートです」
「ひとしくん人形じゃないですよォォォォ!!(涙」
「君は何も見なかった。いいね?」
「ぐすん…」