74 キミカ先生のよくわかる美少女講座 1

今、俺が何をイライラしているのかと言えば、視聴覚室で期待に胸を踊らせている我が高校の女子生徒以外にも数名知らない大人の人達が入ってきて参観日みたいな光景になっている事である。
ちなみに俺はいま壇上に立たされてて緊張しているなかで色々と説明をしなければならない。
とりあえずこのような最悪な状況に至った経緯を説明しましょう。まず、ことの発端はメイだった。
俺がトイレから教室へと帰ろうとしていた時、
「おねぇさまぁ!おねぇさまぁ!おねぇさまぁ!おねぇさまぁ!おねぇさまぁ!おねぇさまぁ!おねぇぇぇぇさまぁぁ!!」
この甲高い声は、と俺が気付いた時は既にメイが俺目掛けて、ガゼルを捉えるチーターのように飛びかかって来ていた。しかし、俺はグラビティコントロールでメイの小さな身体が俺に体当たりを仕掛ける前に止める事には成功した。
「お、おねぇさま、なんですの…その不思議な力」
「ATフィールドです(黒目」
「わたくしはおねぇさまにとっての脅威ではありませんの!」
口を尖らせてスネたように言うメイ。
「もぅ、なんなんだよ…」
「おねぇさまにファッションリーダーとして講義をしていただきたいのですわ!!ミス・アンダルシアとしてみんなおねぇさまの魅力を知って自分を高めたいと望んでいますのよ?!」
「『みんな』って?」
「学園内のミス・アンダルシア・ファンクラブですわ!中等部から高等部に至って幅広くファン層がありますのよ?」
まるで自分の手柄のように言うメイ。
それにしても…女子が俺をファンションリーダーと…?
「えーっと…あたしって女子に人気無かったと思ってたけど」
「それは…ふふふ、おねぇさまに対する嫉妬ですわ。嫉妬しているのですからぜひ自分もおねぇさまのように男子にモテる女の子になりたいって思うのは全然不思議ではありませんの!」
男にモテたい…ねぇ…。
そもそも俺が男に人気があるのは素材がいいからじゃん。現実には存在しえないアニメの中の黄金律で作られた身体なんだから何しても男心をくすぐるに決まってんじゃん。
「ムリムリ。あたしはモテる事を意識してるわけじゃないし…」
「んもぉ〜!おねぇさまったら!(俺の脇腹をツンツン)おねぇさまが思うようにやればいいんですの!ほら、モテる事を意識してなくてもモテてしまうのを才能って言うのですのよ!!」
「はぁ…」
「それにおねぇさまに敵対心燃やしてる女の子達を自分の側につけさせるチャンスですのよ!」
「ん〜…」
そういう意味があるのなら…。
「やってみようかな…。って沢山の女子がくるなら嫌だよ?」
「え?なんでですの?」
「そんなの恥ずかしいじゃん」
「大丈夫ですわ!希望者つのってみましても50人ぐらいですの」
ご…ごじゅうにん…か…。
なんか講義する部屋の席に合わせたような人数だね…。
っていうのを聞いて安心した俺がバカだったよ。
確かに50人ぐらいの希望者が集まっていた。けれど、それ以外にも外部の人間が来てるだなんて誰が思うだろうか…。
しかもユウカとナノカも面白そうだからって来てるし、何故かケイスケも会場に来ててニマニマしながら俺のほうを見てる。
まぁしかたがない…。やるか…。
目を輝かせながらメイは俺のほうを見てる。
「えーっと…本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございました…。えーっと…この度は、タイトルにありますとおり(ホログラムの映像を差しながら)男にモテる女の作り方、という事でして、ミス・アンダルシアであるあたしと、ミス・アンダルシア候補でありましたコーネリアさんとメイリンさんにもお手伝いしていただき、3名の講師で皆様に男にモテる女の子の作り方について、講義を開こうと思います」
並んでる女子生徒はメイを含めて目を輝かせながらパチパチと拍手。それから素早くノートを開いてメモの準備をしていた。誰が招いたか知らないけど外部の人達は参観日で子供の発表を見るように、じっと俺の方を見つめている。なんだこの圧迫感。
まぁ保護者さんは居ないものとしよう…。