39 勧誘せよ24時 5

水口キャプテンが俺の前から立ち去ってからしばらく経過。
さっきまで哀れみのような視線を送っていた女子生徒達はどこかへと去っていった。なんだかんだいって水口を見てたっぽい。
そして水口キャプテンが逃げ出すという事態に陥って勧誘活動が円滑に進まないと判断した女子部員達は「ちょっとあのバカ探してくるよ」などと言い残して俺の前から姿を消した。俺もこの隙に姿を隠したほうがいいんじゃないかという言葉が脳裏に浮かんで、その本能というか直感に従うように俺は更衣室へ向かって歩き出した。
その時。
今までは遠巻きに見ていた新入生の男子達が俺の周囲に集まり始めたのだ。
ちなみに、この学校はつい最近まで女子高だったところ。共学になってからも女子高というイメージは消えてないし、それにそもそもお金持ちのお嬢様が通う場所でもあるせいで、ここにわざわざ入学する男子は少ない。何故か入学しする男子はおとなしいタイプの人が多い。実は中には、ここに入学してから圧倒的な女子と男子の数の差で押されて、おとなしくなってしまう人もいるのかも知れない。
遠巻きに俺を見ていたのもその前に水口を見るために集まったり通り過ぎたりする女子達を避けるためなんだろう。たしかに、女子達がいるなかで、上半身ブラウス・下にスク水の女の子(俺)を心ゆくまで欲望の赴く限り、下手すればそのままおかずにしようと目と脳裏に焼き付けて家に帰ろうなどと、そんな事が出来る勇気は俺にもないや。
その集まった男子の中で、背が低く、色白で、メガネを掛けた明らかに今までスポーツの「ス」の字もしたことがないような男子が俺に向かって言う。
「あ、あの…えっと、入部希望です…」
それに続いて、「…僕も」「僕もです」「僕も入部希望です」と聞こえるか聞こえないかの声で俺に向かって言ってくる。少し離れて見たら一体この人は誰に向かって話をしてるのだろうというぐらいに視線をキョロキョロと俺から離して、俺に向かって話をしてる。キョロキョロと離しはするがその中心部には必ず俺がいるようで、まるでドロイドがターゲットを決める際に周囲の動いている影や熱源反応を察知する時に見せるあの目の動きにも似ている。
まぁこれで、女子部員の狙い通りに入部希望者を俺がかき集める事が出来たみたいな感触である。
「えぇっと、そんじゃ、入部希望者はプールのほうにいこっか」
と俺は先輩面などをしてみる。そんな新入生達を引き連れてプールのある建物に歩いて行こうとした時、
「ん?」
俺は何か違和感のようなものを感じた。