30 リア充記念日 7

家庭科の時間。
みんなで買い出しに行ってチョコの材料を集めてきた。
最初は一つのチョコを作れればいいってなってたけど、家庭科の先生は班につき一つ作るほうが勉強になるから、と、結局8班に分かれてたから8個のチョコを作ることになった。
ちなみに俺の班には俺、ナノカ、ユウカ、ナツコという構成。
「それにしても、キミカさんがまさかあんな事を言うとは思いもよりませんでしたわ」と言うのはナツコだ。
「なんで?」
「だってほら、キミカさんの印象は『ガサツ』で『男勝り』で『無神経』…って思っていましたから」
「まぁ、(中身が男の子だから)普通の女の子みたいな繊細な神経は通ってないのは認めるよ…。でも(中身が男の子だから)男が考えてる事は大抵は判るよ。何が嬉しくて何が辛いとかさ」
「きっとお兄様も喜びますわ」
「ナツコはケイスケにチョコあげたことないの?」
「ありませんわ」
「えー…あげればいいのに」
「プレゼントとは、相手に気持ちを伝えるものですわ。まぁ、妹のわたくしですから『義理』の気持ちを渡す事になるのですけれども、そういう気持ちとか思いとか、それを相手に渡すという行為は相手に色々な影響を与えるのです。多かれ少なかれ」
「別に妹から貰うなら変な気は使わないと思うけどな〜」
「わたくし、思いとか『念』が強すぎて、貰った人間の身体にまで様々な影響を及ぼしてしまうのですの」
『呪い』かよ!
そうこうしているうちにチョコは出来上がった。
溶かして型をとって固める。完全に固まる前に上に食べれる飾り?って奴を並べ綺麗に装飾していく。合計8個のチョコはそれぞれの班はそれぞれ一回で食べきれるものじゃないぐらいに作るわけだから、これらの8個のチョコ、合計すると3キロぐらいの重さがあるものをデブにあげたら、多分そのまま血中のインシュリンだかインスリンだかが爆発的に増えて急性糖尿病で即死するんじゃねーか…。さすがのケイスケもバカじゃないからそんな派手な食い方しないと思うけど。俺だったら半年ぐらいかけてゆっくり食べるかな?
「ちょっと味見おば」
ナノカが残っているチョコをつまんで口に運ぶ。
「んー!あまい!あまーい!!」
「市販のチョコを溶かして入れただけなのに甘くなるものなのかな?」
ユウカも続いて食べる。
「ん〜…確かに甘い。これは甘党殺しだわ」
市販のチョコを溶かして入れるだけ?
「チョコって砂糖を入れるんじゃないの?」と俺は質問する。
「はぁ?市販のチョコに砂糖が入ってるじゃないの」
「え?砂糖入れたよ…」
「ちょっ…あんたなにやってるのよ…」
「さすがキミカっち。料理が辛いときはとりあえず砂糖入れるタイプね。ふむふむ…キミカっちは料理が苦手、と…」
悪かったですね…俺は料理したことありませんから…。
俺が沈んだ顔してると、したり顔でユウカが俺を見ながら言う。
「へぇ〜…あんたって男には顔やスタイルで持てて、後で料理出来なくて幻滅されるタイプなんだぁ…ふーん。まー顔やスタイルだけの女ってたいていそういうのばっかりだからねー」
ぐぬぬ…」
それ以前に男にモテてもしょうがないと思っている俺に隙はなかった。