21 タイガー・ランペイジ 10

「どこだこのやろう!」
俺はグラビティブレードを持ったままそのあたりをウロウロした。スカーレットの野郎が消えたままだ。やっぱり逃げやがったのかあの腰抜け野郎め。
「クッソババァ!!」
などと汚い言葉を吐きながら周囲をウロウロする。そのうち警察関係の人やドロイドが着ている。タイガー戦車に阻止されて近付けなかったからだ。
「キミカさん」
警察のパトから姿を表したのはミサトさんだった。
「あぁ、ミサトさん。スカーレットの奴の行方は?」
「スカーレットは逃亡したわ…それと、私はミサトじゃないわよ」
あぁ、たしかによく見てみると、顔はそっくりだけどメガネを掛けている。
「もしかして、双子?」
「ミサトから話は聞いてるわ。私は桂ミサカ。ミサトの双子の妹よ」
「へぇ〜。やっぱりそうなんだ。よく似てると思ったよ」
「あら、そう?」
ミサトさんが社交的で男を惹きつけるようなオーラをまとった大人の女性だとすると、この人は学生時代は彼氏は居なくて仕事についてからももちろん居なくて、そのストレスのようなものを仕事に注ぎこんでいるような、まさにそういう
「今、私に彼氏がいなさそうだなぁ、って思ったでしょ?」
「いえ、全然」
しかしそれにしても、スカーレットの奴は逃げたのか。やっぱりそうか。でも、今まであいつの事を三十路…いや四十路を軽く超えたババアで、そこいらの普通の女と同じで感情ムキ出しで感情を起点として行動する奴だと思ってたけどそうでもないみたいだ。だからテロリストのボスとしてやっていけるのだろうか。あの状況で俺にボコボコにされていたら、そのまま引き下がるようにも思えないけども。
と、思いつつ、俺は刀を納め、変身を解いた。
そこへ駆けつけてくる巨体。ようやくケイスケの登場だ。
ケイスケは近寄るなり俺の両肩をガシッと掴んで、「どうしてアニメショップで戦うんだぉぉ!!滅茶苦茶になってるじゃないかぁぁぁぁ!うわぁぁぁぁぁぁああん!!」とマジ泣きしている。
「戦いとは…それと引換に色々と失う事を言うのです…(白目」
などと言ってみるも、通用せず。そして「ひぐっ、えぐっ…」などと嗚咽を漏らしながら、ついでに俺の胸に顔を押し当ててスリスリとしている。
「なんか色々突っ込みたいけど、疲れったしお腹減ったし面倒臭いからいいや。ほら、いつまで泣いてんだよ、さっさと車運転して。帰るよ」
課題は多く残る戦闘だった。
だが、とりあえずスカーレットに勝ったからメシが美味そうだな〜。