結ンデ開イテ羅刹ト骸を私なりに解釈してみました

ちょっと小説は小休止です。
夏と言えばとニコニコ動画で「結ンデ開イテ羅刹ト骸」のPVを見ていました。ふと、私なりの解釈をつけてみたくなったので書き綴ってみます。

解釈は人それぞれですので「それは違う」「そう思うのはあなただけ」とかあると思いますが、そう思う方はスルーしちゃってください。

登場人物

語り部・歌い手
PVにのみ登場する「さぁさぁ今宵も無礼講…」と語る化け猫とこの曲を歌う少女は同一。歌い手は生前の少女の姿。化け猫は死して変わり果てた姿。
女郎
1番目のパートの主人公
付子
2番目のパートの主人公

ものがたり

さあさあ今宵も無礼講
獄卒衆すら巻き込んで
宴の瀬にて成り下がるは
純真無垢故質の悪い
悪虐非道に御座います

観衆の前に出てきたのは一匹の化け猫。
成仏する事もできずにこの世を彷徨ううちに、自分と同じ境遇の2人の人間に出会う。彼女は自分の人生は語る事はなかったが、2人の生き様と自分の人生を重ね合わせて、ふと思い出したように、この世の無垢と非道を観衆に説く。

片足無くした猫が笑う
「ソコ行ク御嬢サン遊ビマショ」
首輪に繋がる赤い紐は
片足の代わりになっちゃいない
や や や や 嫌 嫌 嫌

女郎が通りかかるとそこには一匹の猫がいる。片足は無い。猫は「ソコ行ク御嬢サン遊ビマショ」と女郎に話しかける。
驚いてよく見ればそれは猫ではなく首吊り自殺をした女だった。不自然にも片足だけで地面に足をつけていたが、木にヒモで首を吊るしているので立っているように見えただけだった。片足は既に腐乱して地面に落ちていた。
首吊り自殺をした女は語り部の化け猫である。
「嫌だ嫌だ」と逃げ出す女郎。

列成す卒塔婆(そとば)の群れが歌う
「ソコ行ク御嬢サン踊リマショ」
足元密かに咲いた花は
しかめっ面しては愚痴ってる

女郎が逃げ出した先には墓場。
堕胎された子供達や自殺した女郎の卒塔婆が「ソコ行ク御嬢サン踊リマショ」と歌っている。視線を落とすと年老いた女郎がしかめっ面をして「何がそんなに怖いのか…」と愚痴を言う。彼女たちにとってはそれは日常だった。

腹を見せた鯉幟
孕んだのは髑髏

女郎は妊娠した。
だが孕んだ子供は死産も同然。
なぜなら邪魔で殺すからだ。

やい やい 遊びに行こうか
やい やい 笑えや笑え
らい らい むすんでひらいて
らい らい 羅刹と骸

女郎は男と遊び、笑いあい、出会っては分かれる。しかしその実は我が子を殺す「羅刹」と、羅刹に殺された子供の「骸」

一つ二つ三つで また開いて
五つ六つ七つで その手を上に
松の樹には首輪で 宙ぶらりんりん
皆皆皆で 結びましょ

一つ二つ三つ、五つ六つ七つは掛け声。(四は「死ぬ」事から、演技が悪く掛け声には使わない)股を開き、手を腹の上に乗せて、子供を堕ろす。そして皆で松の樹にその子供を吊るす。

下らぬ余興は手を叩き、座敷の囲炉裏に焼べ曝せ

観衆に向かって化け猫は「お前たちもそのような話があるのだろう。さぁ、囲炉裏を囲んでさらけ出してしまえ!」と言う。

下賤な蟒蛇墓前で逝く
集り出す親族争いそい
「生前彼ト約束シタゾ」
嘯くも死人に口は無し
や や や や 嫌 嫌 嫌

卑しい親が死ぬ。
その死を知ってその親の残した遺産を親族が争い奪い合う。
「生前彼ト約束シタゾ」と嘘を言う者まで現れるが、当の本人は死んでいるので嘘か真かもわからない。
そんな状況を見て「嫌だ嫌だ」と言う子供達。

かって嬉しい花いちもんめ
次々と売られる可愛子ちゃん
最後に残るは下品な付子
誰にも知られずに泣いている

親の残した財産(子供達)は次々と売られていく。可愛い子を優先して売られていき、最後に残ったのは付子(不細工な女の子)付子はそんな状況に泣いているがそんなのは誰も知らない。

やい やい 悪戯しようか
やい やい 踊れや踊れ
らい らい むすんでひらいて
らい らい 羅刹と骸

売られて女郎となり働く少女に「悪戯をしよう」と客は言う。「踊れ踊れ」と客は言う。少女は他の女郎と同じように出会っては分かれを繰り返す。そして他の女郎と同じように我が子を殺す「羅刹」となる。そして残るのは羅刹に殺された子供の「骸」

三つ二つ一つで 息を殺して
七つ八つ十で また結んで
高殿さえも耐え兼ね 火傷を背負い
猫は開けた襖を閉めて行く

三つ二つ一つ、七つ八つ十は掛け声。(四は「死ぬ」事から、九は「苦しむ」事から、掛け声には使わない)赤子の喉を絞めて殺し、それを樹に結ぶ。
高殿(坊さんなど徳の高い人)でも、それらの行為によって溢れでた怨念の禍々しさに耐え兼ね手がつけられない。そして高殿の背後を語り部である化け猫が通り過ぎていく。

結局皆様他人事(結局皆様他人事)
結局皆様他人事(結局皆様他人事)
結局皆様他人事(結局皆様他人事)
他人の不幸は 知らんぷり!

付子に向かって化け猫が問いかける。
「女郎、女郎を買う男達、お前の親戚一同、災いを清めようとした坊主…。結局みんな他人事なのか?」何度も、何度も確認する。何度も。
付子は答える。
「結局みんな他人事なのだ」「結局みんな他人事なのだ」「結局みんな他人事なのだ!」何度も、何度も答える。何度も。
化け猫は今まで見たことと自分の境遇を重ね、
「他人の不幸は 知らんぷり!」
と悟る。

やい やい 子作りしようか
やい やい 世迷えや世迷え
らい らい イロハニ惚れ惚れ
らい らい 羅刹と骸
一つ二つ三つで また開いて
五つ六つ七つで その手を上に
鳥が泣いてしまわぬ 内にはらへら
一つ二つ三つで また明日

女郎に向かって「子作りしようか」と男がいう。そしてもう「どうにでもなってしまえ」と女郎が言う。もう惚れてしまって何も考えられないのだ。1,2,3で惚れてしまう(イロハとは順序を表す)そしてそこにあるのは我が子を殺す「羅刹」と、羅刹に殺された子供の「骸」
一つ二つ三つ、五つ六つ七つは掛け声。(四は「死ぬ」事から、掛け声には使わない)股を開き、手を腹の上に乗せて、子供を堕ろす。赤子が泣いてしまわぬうちに腹減らし(殺害)しておこう。そして、そんなことがまた明日も繰り返される。

悪鬼羅刹の如く その喉猛らせ、
暴れる蟒蛇の生き血を啜る。
全ては移ろうので御座います。
今こうしている間にも、様々なものが。

自分自身や、自分を取り巻く人々は悪鬼羅刹のように、無邪気に欲に忠実で、本来なら畏怖の対象となる大蛇でさえ、欲のために血をすする。しかしそれは人の本来の姿でありどうしようもないのだと化け猫は言う。
しかしここで化け猫は「はて、何の話をしていたかな?まあ、そんな与太話は終わりにしましょう」と言う。そう、今までの話しは与太話(嘘)だと言って観衆を安心させるが、本当は違う。観衆が『他人に無関心かどうか』それを試したのだ。

さあ、お手を拝借。
一つ二つ三つで また明日

最後に呪いの言葉を吐いて化け猫は観衆の前から消える。
「また明日」
観衆とは…。
ニコニコ動画を見る人々のことである。